『キャプテン翼』が連載開始から40年。鷲見玲奈が高橋陽一に聞く作品秘話 (2ページ目)
鷲見 40年にわたり、ずっと熱い闘いを描き続けてこられていますから。そのなかでも、特に思い入れの強い試合などはあるのでしょうか。
高橋 いつも、"次に描く試合が一番おもしろい"という気持ちで描いています。でも振り返ると、南葛中学と東邦学園の決勝戦(全国中学生サッカー大会)などは"描き終えることができたら死んでもいいや"くらいの気持ちで描いていましたね。ピークというと違いますが、最も情熱が集約されていたとなると、この試合かと思います。
鷲見 (大空)翼くんと、日向(小次郎)くんの、凄まじい一戦でしたよね。結果は引き分けでした。まさか!と思いました。
高橋 最初は同点にするつもりはなかったんです。翼が勝つ予定で描き進めていたのですが、日向があまりにも頑張っていたので、負けさせるのがかわいそうになって。それで同点優勝ということにしました。
鷲見 描いている途中でストーリーが変わることもあるのですね。あと今お話を聞いて思ったのですが、悪役と言えるようなキャラクターがいないですよね。その点は、先生のキャラクターへの優しい気持ちが反映されているのかと思っているのですが。
高橋 そこまで意識はしていないです。でも、自分の作るキャラクターに愛情はあります。だから、本当の意味で悪い奴は描いていないのかもしれません。
鷲見 私、以前は日向くんが好きだったんです。真っすぐなところがカッコよくて。それでいて、人から何か言われたことを素直に吸収したりする部分もある。ただの怖い人じゃない。ただ、今回改めて読み直してキーパーの森崎(有三)くんがすごくいいな、と思いました。
高橋 そうなんですか(笑)。
鷲見 すごくいい子ですよね。翼くんと一緒にサッカーボールを「もう怖がらないよ」と言っているシーンなど、かわいくてしょうがないです。最近では『キャプテン翼マガジン』に載っている『MEMORIES』という読切で、若林(源三)くんというレギュラーキーパーとして絶対的な存在がいて、彼から「レギュラーになりたいなら転校するんだな」と言われた時の返し。「GKが上手くなるための最高のお手本がいるんですもの」と断るところなど、「ああ、いい子!」と思いました。なんか、ただの告白みたいになっていて申し訳ありません(笑)。でも、大人になって読むとまた読み味が違うんです。
高橋 読む時期によって感想が変わるという話はよく聞きます。大人になって読み返したら、子どもの頃には気づかなかった点に勘づいたり。そういう感想をいただくことがあります。
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