検索

パリオリンピックで12年ぶりの復活劇 鈴木聡美が語る「30代で自己ベスト更新」の理由 (2ページ目)

  • 栗原正夫●文 text by Kurihara Masao

【蘇った12年前の記憶】

――海外のレースは久しぶりだったと思いますが、好調ぶりがうかがえました。

「23年に中国(杭州)でのアジア大会はありましたが、ヨーロッパでのレースは久しぶりで、私の記憶が正しければ17年のブタペスト(ハンガリー)での世界選手権以来でした。

 選考会後の国内での強化期間、アミアン(フランス)での直前合宿などを含め、調整はうまくいったと感じています。アミアンは暑すぎず寒すぎず、過ごしやすい気候で、生活しやすい環境でした。この年齢なので、合宿中は練習後の疲労回復など難しい面もあるのですが、代表のトレーナーさんたちに甘えまくったこともあり、いい状態で臨めました(笑)」

――8年ぶりの五輪でしたが、過去の大会と比べ気持ち的に変化はありましたか。こみ上げくる感情があったとか。

「ロンドン(五輪)のときの記憶がフラッシュバック的に蘇ってくるようなことはありました。コロナ期間は国内の大会で無観客の状態も経験しましたし、23年の福岡での世界選手権も大勢の方が会場に来てくれましたが、やっぱり海外で開催される五輪は雰囲気が違いますから。会場中に響く拍手や指笛が懐かしく感じられましたし、観客の方がスタンドの座席から落ちてしまうんじゃないかってほどの盛り上がりを見て、ロンドンのときのことをいろいろ思い出しました。

 最初にも言いましたが、私はヨーロッパの街並みや風景が好きで、ロンドンの結果もあって、勝手にいい意味でのジンクスを感じています。私はヨーロッパを舞台にした映画『ハリー・ポッター』や漫画『黒執事』なども好きですし、ディズニー映画にも出てくるノートルダム大聖堂を見て『ああ、これかっ!』ってテンションが上がったり。そんな気持ちの高ぶりが、少なからず競技にいい影響があったのかなと思っています」

――競泳はメンタル面が結果に大きく影響するとも言われていますが、心身ともにいい状態で臨めたことがいい泳ぎにもつながったということでしょうか。

「海外に行けば、言葉の壁や環境の違いがあり、それをストレスややりにくさと感じてしまえば、結果を出すのは難しい。そういう意味で私自身、リオ五輪やロンドン五輪と比較しても、心の余裕があったからか広い視野で大会を見られたと実感しています。多少の理不尽は織り込み済みで、どんなことに対しても『そういうもの』だと思うようにしていたのがよかったのかもしれません(笑)」

2 / 4

キーワード

このページのトップに戻る