本多灯が語るパリオリンピック後とこれから 「2カ月のオフで自分の気持ちをすべて壊した」 (3ページ目)
【「2028年? 何も考えてないです」】
明るい性格で、日本代表のムードメーカー的存在でもあった本多は、レースに勝つと筋肉を強調する"マッスルポーズ"を連発するなど、まっすぐで「お調子者」というイメージもあった。それだけに、五輪の敗因がメンタルの問題だと聞いたときは、驚きを隠せなかった。だからこそ、堀之内コーチもリスタートに慎重な姿勢を見せているのだろう。
「おっしゃるとおり、灯は気持ちが前面に出るタイプで、集中したときに爆発力を発揮する。なので、それがはっきりと戻るまでは、レースに戻るのは待ったほうがいいかなと......。小さくまとまっても一番上にはいけない。彼本来の持ち味をしっかり取り戻したうえで"復帰"するのがいいかなと思っています」(堀之内コーチ)
練習には戻った本多だが、今後のことは白紙だと強調する。
「年末から年明けくらいにかけて、練習メニューも徐々にキツくなっていくと思うので、それが終わったくらいでコーチとも今後について、しっかり話していけたら。
2028年の五輪? 正直、いまは何も考えてないです。そういうワードを口にするようになったら、『やっとやる気が出たんだな』と思っていただければ。ロサンゼルスといえば、ドジャースの大谷翔平選手。いまは五輪よりもドジャースの試合を観に行きたいという思いのほうが強いかもしれません(笑)。
2カ月のオフで自分の気持ちをすべて壊したので、いまは新たに自分の気持ちを鮮明化している段階。まずは自分のことを理解し、あとは地道にやるだけ。またゼロから大きな山をひとつずつ、上っていけたらと思っています」
本多は、一度すべてをリセットし、ゼロからスタートを切ろうとしている。パリ五輪では、競泳人生で初めてレース後に「悔し涙を流した」と振り返った。苦い経験を、今後どう生かすかは本人次第だが、いつかレースに戻ってくる時、本多灯がどんな姿を見せてくれるかが楽しみだ。
(終わり)
【profile】
本多灯(ほんだともる)
2001年12月31日、神奈川県生まれ。イトマン東進所属。幼稚園時代に兄の影響を受け、水泳を始める。2020年に日本大学に入学。2020年日本選手権の200mバタフライで初優勝を果たす。2021年東京オリンピックでは200mバタフライで銀メダルを獲得。2024世界水泳選手権ドーハでは200mバタフライで日本人初の金メダルを獲得した。2024年パリオリンピック200mバタフライに出場。
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