本多灯が語るパリオリンピック後とこれから 「2カ月のオフで自分の気持ちをすべて壊した」 (2ページ目)
【「気持ちがどこにあるか、わからない」】
本音を言えば、2カ月の休暇を取っても競泳への気持ちが戻ってきたわけではない、とも言う。
「ただ、これ以上休んでもやることはないし、何かやりたいことがあるわけでもなくて......。だから、いまも気持ちがどこにあるか、わからないというのが僕の本当の気持ちです。正直、何もしていないよりは、泳いでいたほうが気が紛れますから。
そういう意味では、いまはオフに太ったぶん(体重は3キロ増加)のダイエットをしながら、自分が何をしたいのかというのを、少しずつ鮮明にしていければと思っているところです」
本多がプールに戻ってきたのは9月30日のこと。そこから約1カ月は1日1回の練習を行ない、取材に訪れた11月のある日、本多はゆっくりとプールで泳ぐ練習に終始していた。
「今日はゆっくり7キロ泳いだのですが、ずっと練習していなかったので、いまは泳ぐことがこんなにキツいってことを思い出しながら、やっている感じ。後輩と勝負しても、いい勝負どころかボコボコにされましたし(笑)」
本多にとってありがたいのは、指導するイトマンの堀之内徹コーチも、「焦らずゆっくりとサポートしていきたい」と話していることかもしれない。
「私たちスタッフは、彼がどんな状況だろうが応援する立場ですから。そこだけは彼に忘れないでほしいし、もう一度気持ちが戻れば、サポートしていくだけかなと。
いま灯は22歳ですが、五輪の金メダルを除けば、(競泳の記録やタイトルは)ある程度持っています。もしまた達成したい目標が出てくるのなら、どうしても人よりも高いところで勝負せざるを得ないでしょうし、慌てて始めても息切れしてしまう。だから体力を維持するために練習は再開していますが、半年なら半年、1年なら1年、休むことも悪くない。
もし代表に戻れば、またタイムや順位に追われ、他者と比較され、周りにどう見られるかという思いが先に来てしまうかもしれませんから。もちろん、灯は給料をいただきながら泳いでいるわけで、会社やスポンサーの方々にきちんと理解していただくことは必要ですけどね」(堀之内コーチ)
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