水泳でも賞金を稼げる大会。松田丈志が語る「競泳W杯はここが面白い」 (2ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • photo by Enrico Calderoni/AFLO SPORT


3.賞金レースである
 W杯は賞金レースで、世界のトップスイマーの中にはここで生活費を稼ぐ選手もいる。
1種目優勝すれば1500ドル。各種目6位まで賞金が出る。さらに各クラスターで男女別に全種目中、タイムから算出されたポイントでランキングが出て、トップの選手には5万ドルが、2位が3万5000ドル、3位が3万ドル......と8位まで賞金が出る。

 さらに8戦通算のポイントランキングでトップの選手には10万ドルが贈られる。
つまり最も稼ぐ選手はこのW杯シリーズだけで25万ドル以上稼ぐ計算だ。

 私も何度もこのW杯シリーズに参加した。好きな大会だった。いわゆる冬場の泳ぎ込みのシーズンは選手にとってもつらい時期だ。さらに目標となる大会までも時間があるため、トレーニングのモチベーションを保つのが難しい時期でもある。

 そんな時期に行なわれるW杯シリーズはいい目標になる。世界のさまざまな都市でレースができる喜びと刺激。海外の選手とも一緒に転戦しレースを重ねる中で、自然と仲よくなり、いい友人関係とライバル関係ができてくる。これはいざ世界選手権やオリンピックの決勝で勝負する時に意外と重要だ。そこに顔なじみの選手がいるだけで、その舞台に自分も溶け込むことができ、緊張がほぐれるものだ。さらには頑張れば賞金ももらえる。

 スピード感は長水路よりあるから、泳いでいても気持ちいい。短期間で転戦、そして1大会の中でも何度もレースをするので、体力的にはしんどいが、それ自体がいい高強度トレーニングにもなる。

 これらのことから、競泳のW杯はその大会自体で活躍することが目標というよりは、その先にあるメインの大会に向けて、強化の一環でもあり、短水路でスピード感を身体に覚えさせながら技術を磨き、さらには賞金も狙っていける。選手にとって魅力的な大会だ。世界選手権やオリンピックよりもスピード感のあるレースとなるため、観る方も楽しめる大会だと思う。

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