【水泳】北島康介100m5位。それでも200mメダルの可能性はある!

  • 折山淑美●文・取材 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

レース後呆然とする北島康介レース後呆然とする北島康介 競泳初日、午前の予選から59秒台の好タイムが続々と飛び出し、午後の準決勝では昨年の世界選手権3位のキャメロン・ファンデルバ(南アフリカ)が、58秒83の五輪新で泳いだ男子100m平泳ぎ。決勝進出者8番目の記録が59秒78という予想以上にハイレベルな争いの中で、北島康介はその中心人物の一員に加わっていなかった。準決勝は予選よりタイムを落す59秒69で、決勝進出者中6番目の記録だったからだ。

「足は蹴れているし腕も掻けているけど、それがうまく噛み合っていない。それはほんの少しのバランスだけど、ハマり感はちょっとないね。でもメダルの可能性がないわけじゃないから、チャンスをものにできるようにベストを尽くすだけです」

 午前の予選は軽すぎるような感じの、小さな泳ぎになっていた。夜の準決勝では伸びる泳ぎを意識したようだが、ストローク数が1つ減った代わりに前半の50mが28秒30と、予選より0秒26も遅くなってしまった。

 まるで昨年の世界選手権を思い出させるチグハグしたレースぶり。日本チームの平井伯昌ヘッドコーチは「考えながら泳いでしまっている。パワーはあるけど、泳ぎにキレがない」と指摘した。

 翌日の夜に行なわれた決勝。前半、北島の泳ぎには若干のキレが戻り、しっかりと前進する泳ぎに見えた。他の選手と対等に競り合った前半の50mは、27秒79。十分に勝負できる位置取りだった。

 しかし、50m間のストローク数が19と多かった。本人も「ストロークが多かったから、最後は浮くんじゃないかと思ったけど、案の定失速しましたね」と苦笑するように、後半の50mは準決勝より0秒62遅い32秒01もかかった。 結局、最後はブレンダン・ハンセン(アメリカ)や追い上げてきたダニエル・ギュルタ(ハンガリー)にも競り負けて59秒79の5位。それまでの記録を0秒12塗り替えた58秒46の世界記録で優勝したファンデルバの、足元にも及ばないような結果になってしまった。

「自分の力を出せなかったことは悔しいし、折角の舞台で最高のパフォーマンスを発揮できなかったことは残念です。この3日間は足が良くなったら手がダメになったり、手が良くなったら足がダメになるという繰り返しで。頭の中で色々なことを考えながら泳いでいたし、そうやっているとまた迷いが出てきたりで。それがすごく苦しかった」

 準決勝のファンデルバの泳ぎを見た時、泳ぎをどう持ち直しても、優勝は無理だと感じた。だが、五輪前に自分の想定している58秒9前後を出せば、メダル争いには加われる。「可能性があるなら、トライしなければいけない」と考えた末の結論が、後半のことは目をつぶっても前半を27秒台で入り、他の選手との勝負に加わらなければいけないというレース展開だ。結果的には2位のクリスチャン・スプレンガー(オーストラリア)は58秒93で、3位のハンセンは59秒49。可能性は十分あった。

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