【箱根駅伝2026】早稲田大・山口智規が見せた意地の2区日本人トップの快走と追求し続けた「トラックと駅伝」の両立 (2ページ目)
【駅伝を走ること自体がダメというわけではない】
トラックに専念するという選択肢もあったかもしれない。だが、山口はそうはしなかった。
「箱根が悪いとか、駅伝がダメだとか言われることもありますが、そう言っている日本の風潮のほうが悪いんじゃないかなって思っています。トラックを目指しているなかで、どういう取り組みで駅伝に向かっていくのかが大事なのであって、駅伝を走ること自体がダメというわけではない。
現にヨーロッパの選手だってハーフマラソンを走っているじゃないですか。世界陸上の10000mで3位だったスウェーデンのアンドレアス・アルムグレン選手は、5000mを12分44秒で走りながらハーフを58分41秒で走っています。そういう選手もいるんです」
山口が例に挙げたアルムグレンは、5000m、10kmロード、ハーフマラソンの3種目で欧州記録を持つ。長距離でそれほどの実績がありながら、1500mの自己記録は3分32秒00と日本記録より3秒以上速く、800mからハーフマラソンまでマルチにこなす選手だ。アルムグレンの例は極端にせよ、山口もまた、高いレベルでトラックと箱根駅伝との両立を目指した。
「やっぱり両方でしっかり結果を残せるのが早稲田らしさだと思いますし」
大学生になって、こんな新たな理想像を思い描いていた。
1年生の頃はなかなか自己記録に見合った活躍を見せられなかったが、大学2年目のシーズンは、自身の理想像に少しだけ近づいた。新年度を迎える直前の3月に行なわれたTOKOROZAWAゲームズの3000mで、三浦龍司(現SUBARU /当時順大)やヴィクター・キムタイ(城西大)に競り勝ち1着になると、5月の関東インカレは5000mで3位入賞を果たした。
ロードシーズンに入っても活躍は続く。秋にはクラウドファンディングで募った寄付金を元手にチェコ遠征を敢行。11月の上尾シティハーフマラソンでは当時の早大記録を30秒以上上回り、1時間01分16秒の好記録をマークした。
さらに、箱根駅伝では初出場ながら花の2区を担い区間4位と好走。8人抜きの活躍で、記録も1時間06分31秒と、渡辺康幸(現・住友電工監督)が持っていた早大記録を実に29年ぶりに塗り替えた。
それだけに止まらない。年度の終わりの日本選手権クロスカントリー競走では日本一の称号を手にし、世界クロスカントリー選手権で初めて日の丸をつけた。
臙脂のエースは、押しも押されもせぬ大学長距離界を代表する選手に駆け上がっていくかに思われた。
つづく
著者プロフィール
和田悟志 (わだ・さとし)
1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。
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