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【箱根駅伝2026】「5強」崩し期待の"たたき上げ軍団"創価大、榎木和貴監督の育成、強化へのこだわり (3ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【約束した以上、妥協はさせない】

 榎木監督の言うように、創価大は今年まで5000m13分台の有力選手を獲得することができなかった。14分台、15分台の選手をどのように育て、箱根で戦えるチームにしていくのかが、毎年のテーマになっていた。

――14分台、15分台の選手を13分台に持っていくのは簡単ではないですし、彼らを箱根で戦えるようにするのはかなりの苦労があるのではないでしょうか。

「私が就任した当時は、まだ1450秒から15分台の選手が多かったです。そんな彼らが、例えば青山学院大に13分台で入学してきた選手たちと箱根で戦わないといけないわけです。そのため、最初の2年間は地道に距離を踏ませるなどして土台づくりをしました。そしてレースで1430秒台を出せば、次は20秒台を狙い、クリアするとみんなで喜ぶ。そういうふうに強くなっていったので、成長を見られる楽しさがありましたね。

 その後、1410秒前後の選手が入ってくるようになりましたが、(当時急速に普及した)厚底シューズでタイムを出せた感じなので、1450秒で入ってきて、そこから鍛えてタイムを上げてきた選手のほうが強いなと感じることもありました」

――持ちタイム1450秒台から1分以上タイムを縮めていく過程で、その困難さに音を上げる選手はいないのですか。

「そもそもウチはそういう選手を勧誘していないです。高校生に『どこを目指しているの?』と聞くと、ほぼ全員が『箱根駅伝に出たい』と言います。だから、『今の持ちタイムから1分縮めないと箱根駅伝では戦えないよ』『箱根を走りたいのであれば、ハーフ(マラソン)の距離を単独で走る力を求められるよ』と伝えるんです。それでも『走りたい』と言って入学するわけですから、約束した以上、妥協はさせません。

(走行)距離が少なければ、『そんなんじゃ箱根にたどり着かない』と強く言いますし、箱根を走るためには厳しさを求めていきます。ただ、5000m13分台の高校生が入ってくる来年からは、育成、強化のフェーズが変わってくるでしょう」

――より高いレベルでの成長を求めていくことになりますか。

「これまで14分台、15分台の選手には『箱根を走りたいのであれば、月間で750km以上は距離を踏みなさい』と言ってきました。でも、13分台の選手のなかには『別にそこまで距離を踏まなくても、ハーフぐらいなら走れます』という選手がいるかもしれない。その時、われわれ指導者がどういうアプロ―チをしていけばいいのか、という壁に初めてぶち当たると思います。

 強豪校はもう10年くらい前からそういう壁にぶつかりながら強化してきています。でも、ウチは来年初めて13分台の選手を迎えるので、非常に楽しみですけど、逆に成長させることができなかったら、『創価大は1420秒前後の選手しか育てられない』という厳しい見方をされる。最低でも日本選手権に出られるくらいに成長させないと、そういう評価になることを覚悟してやっていかないといけません」

後編を読む>>>創価大・榎木和貴監督「目標の3位(以内)を達成すれば、来季はその上を目指すところにいける」

Profile

榎木和貴/えのきかずたか
1974年6月7日生まれ。宮崎県立小林高校では全国高校駅伝で区間賞を獲得。中央大学では箱根駅伝で4年連続区間賞に輝き、3年時にはチーム14回目の総合優勝に貢献した。卒業後は旭化成に入社し、2000年別府大分毎日マラソンで優勝。2004年に沖電気陸上競技部コーチに就任。その後、トヨタ紡織陸上競技部コーチ、監督を経て、2019年に創価大学陸上競技部駅伝部の監督に就任すると、1年目の箱根でチーム史上初のシード権獲得、2年目で往路優勝、総合2位に導いた。

著者プロフィール

  • 佐藤俊

    佐藤俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)、「箱根5区」(徳間書店)など著書多数。近著に「箱根2区」(徳間書店)。

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