【駅伝】ニューイヤー出場権奪取なるか 神野大地"監督"率いるMABPが東日本実業団駅伝に挑む「可能性は50%です」 (3ページ目)
【選手の時と同じような緊張感がある】
選手兼監督の神野は今回、出走しない。6月に難病ジストニアの手術を受け、そこから思うように回復が進まなかった。
「本当は走りたかったんですけどね。体が思うように動かないので複雑な気持ちもあるんですが、やりがいのある仕事をまかせてもらっているので、その仕事をまっとうすることが今の自分の大きなモチベーションです。もし、今も選手だけだったら、精神的にしんどかったと思うので、こうして自分の気持ちを入れられるような目標に携わることができて幸せです」
東日本実業団駅伝に向けて、10月には千葉県内で最終合宿を行なった。この合宿も順調に終わり、選手には区間配置を伝えた。
「うちは突出したエースがいないので、チーム全体で戦うしかない。戦い方としては、大学駅伝のように最初から突っ込んでいくというのは、ほぼないですね。前を追いかけようとして2分30秒ぐらいで突っ込んでも、トータルでタイムが落ちるなら最初から一定のペースを刻んでいくことが大事だと思います。
駅伝には流れがあるので、最初に大きく遅れてしまうと終わってしまう。そう考えると、まず1区、2区、3区をどう乗り越えるか。3区までは予選通過圏内(13位以内)でレースを進めたいですし、それができれば、よほどのことがないかぎりいけると思います。
ただ、全体を冷静に見ると、(現実的には)3区終わりでボーダーよりちょっと後ろくらいかなと思うので、勝負は4区から(最終7区まで)どう前に出ていくか、ですね」
予選通過できるのは上位12チーム(参加28チーム)に、タイム条件をクリアしたプラス1の計13チーム。登録メンバーのリストを見ると、GMOインターネットグループ、ヤクルト、富士通、SUBARU、ロジスティード、Hondaといった強豪はアクシデントがないかぎり、通過が濃厚。MABPは7位から13位までの椅子を争うことになる。
「上位チーム以外で予選通過を争うのは12、13チームだと見ています。他チームと自分たちの戦力を比較すると、現状、通過の可能性は50%です。決して楽観はできない。ボーダーライン上の厳しいレースになると思います」
ひとつでも順位を押し上げるために必要なことは何だろうか。
「スタートラインに、みんながよい状態で立つこと。それができれば入賞争いにも加われると思うんです。だから、ケガなく、病気なく、当日のスタートを迎えてくれることが一番。今回、僕は選手じゃないですけど、選手の時と同じような緊張感があります。どうしたらチームとして1分、1秒を縮められるかを日々考えています。今は、すごく人生を"生きている"感があります」
7月末からのすべての合宿に帯同し、選手のことをより理解し、練習はもちろん、座学、中野トレーナーの指導、食事での体づくりなど、あらゆる手段を講じてチーム全体のレベルを押し上げてきた。たぶん今は、チームに対して自分の子どものような愛着を感じているのではないだろうか。コツコツと力をつけてきたチームが、ヒリヒリするようなレースで、どんな走りを見せてくれるのだろうか。
11月3日、MABPマーヴェリックが満を持して初陣を迎える。
後編を読む>>>東日本実業団駅伝に挑む注目の新チーム「MABP」、主将の木付琳は「ひとりでも欠けたらチームが終わるという危機感を持ってやってきた」
著者プロフィール
佐藤俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)、「箱根5区」(徳間書店)など著書多数。近著に「箱根2区」(徳間書店)。
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