先駆者・藤原新が振り返るプロランナーという生き方「周囲の視線が怖かった」「大迫選手のようになりたかった(笑)」 (2ページ目)
【アンチの声「マラソン選手は黙って走ればいい」】
プロとして活躍する姿をまぶしくとらえる人がいる一方、藤原の言動や姿勢に嫌悪感を抱く人もいた。「マラソン選手は黙って走っていればいい」「調子に乗るなよ」という声も聞こえてくるなど、藤原への注目度は一気に高まった。
「そこそこ追い込まれましたね。周囲の視線が怖かったです。やっぱりオリンピックってすごいんだなと思いました。でも、スポーツってそんなもんじゃないかなという考えにも至りました。いい時はホメても、ダメな時はバカヤローって言えるのがスポーツのあるべき姿なのかもしれない。
例えば、サッカーでは負けて(選手が)生卵を投げつけられることがあった。平時に生卵なんて投げたら大喧嘩になりますし、もちろん、今の時代に許されることではないとも思いますが、その一方でスポーツの現場だからこそ、ある程度の健全さを保てていたとも思うんです。僕はそういう一面を提供したのではないか、意味のあることなんじゃないかと思っていました」
ロンドン五輪前、藤原はフランスのサンモリッツで合宿をした。ヨーロッパの選手たちが利用するホテルがあり、藤原もそこに投宿し、調整をしていた。選手たちと食事している際、いつロンドン入りをするのかという話になった。
「僕は、大会1週間前に入ると言ったんです。そうしたらポーランドのヘンリク・ゾストという選手が『マジか、お前?』って顔をしたんです。『1週間前は、一番疲労が出るタイミングだ。お前、(ビクトル・)ロスリン(スイス)と友人だろ? あいつは高地トレーニングをよく理解しているから相談してみろ。とにかく1週間前だけはやめろ』と真顔で言われたんです。
でも、事前に昆明(中国)で合宿していた時も問題なかったので、そのまま自分のプランどおりに1週間前にロンドンに入ったんですが、ずっとゾストの言葉と表情が頭の隅っこに引っかかっていました」
ヨーロッパのトップランナーの提言がリアルなものだったのかどうかは定かではないが、ロンドン五輪のレースで、藤原は後半、苦戦を強いられることになる。
2 / 4