早大のダブル大物ルーキー、5000m・鈴木琉胤&3000m障害・佐々木哲が日本選手権で感じた悔しさと充実感 (3ページ目)
【ふたりがつかんだ悔しさと充実感】
佐々木、鈴木ともに、上昇志向が強いだけに悔しさを口にしていた。ただ、その悔しさには充実感も伴っていた。
「自分の狙ったとおりのレースはできなかったんですけど、新家さんと青木さんといった日本を代表する選手の方と肩を並べて走ることができ、自分の中では8割、良いレースをすることができました」
佐々木にとって、青木や新家と渡り合った経験は、自らを数段レベルアップさせたに違いない。東京世界選手権は少し遠ざかったが、高いレベルに身を置き得られたものは大きかった。
「世界の舞台に立つために自分自身との勝負を半年間やってきて、目標には及ばなかったんですけど、ここまで過程でいろんなものを得ることができました。これからの大学生活や駅伝シーズンに向けて、人間としてひとつ成長できたかなと思います」
佐々木が口にした、こんな言葉には実感がこもっていた。
「自分のレースをした上でこの順位なので、初めての日本選手権ですし、よいものがあったのかなって思います。経験として良かったと思います」
鈴木もまた、走り終えて晴れやかな表情だった。
「言い訳じゃないんですけど、まだ1年生なので、これをステップとして、駅伝もあるのでスタミナがつくと思いますし、2年後、3年後に力を発揮できればなと思います」
鈴木が言うように、彼らはまだ大学1年生なのだ。十代でこの舞台に立つこと自体、快挙と言っていい。そのうえで、堂々としたレースを繰り広げ、しっかりとインパクトある活躍を見せたのだから、やはり彼らは並のルーキーではなかった。
この後は、佐々木、鈴木ともに7月下旬にドイツで開催されるワールドユニバーシティゲームズに出場する。
「やはり疲れが残っているなと(決勝で)感じたので、ユニバーまでに戻せればいいなと思います。でも、暑さもあるので、しっかりケアをして、焦らずに調整していきたいです。ユニバーは初の日本代表の試合なので、負けるわけにはいかない。しっかり結果を残していければなと思います」
意外にも初の日本代表となる鈴木。出場する試合を絞って大舞台で活躍した高校3年時とは打って変わって、今季は大きな試合が続いているが、「目の前の大会にしっかり全力で臨みたい」と覚悟を決めている。
「ワールドユニバーシティゲームズをまずは狙っていきます。これからはチームとしても、駅伝を目指していくので、この日本選手権での悔しさを糧にまた頑張りたいと思います」と佐々木。
ワールドユニバーシティゲームズが終われば、夏合宿を経て、駅伝シーズンに向かっていく。前半戦の勢いそのままに、ふたりのスーパールーキーは駅伝でも活躍を見せてくれそうだ。
著者プロフィール
和田悟志 (わだ・さとし)
1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。
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