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早大のダブル大物ルーキー、5000m・鈴木琉胤&3000m障害・佐々木哲が日本選手権で感じた悔しさと充実感 (2ページ目)

  • 和田悟志●取材・文・写真 text & photo by Wada Satoshi

【鈴木が"使われても"前に出た理由】

 鈴木が出場した5000mは、今回はターゲットナンバー(出場選手の上限数)が設定されなかったため、85人もの選手が出場した。予選は3組行なわれ、そのうち決勝に進めるのは各組上位6人、計18人だけと、かなりの狭き門だった。

 鈴木が振り分けられた第3組には、優勝候補筆頭の森凪也(Honda)や鈴木と同郷・千葉県出身の篠原倖太朗(富士通)のほか、大学生ランナーが数多く名前を連ねた。

「またカンカレ(関東インカレ)をやらなきゃいけないのか、って思いました(笑)。カンカレで勝った人にも、ほかの大学の選手たちにも負けたくないっていう気持ちで走りました」

 鈴木は、その関東インカレ1部で日本人トップの2位になっている。その時は青学大の黒田朝日や折田壮太、創価大の小池莉希は2部校の選手のため直接対決はなかったが、大学生の誰にも負けるつもりはなかった。

「小池さんが出るかなと思っていたんですけど、誰も出なかった。『僕が(前を)引く展開か!』って思ったんですけど、誰が来ても前を譲らずに、(勝負所に備えて)脚が残っている状態でいたいなと思っていました」

 黒田や小池も序盤から積極的にレースを進めるフロントランナーだが、鈴木は上級生に先頭を譲ることなく、日本選手権でも序盤から先頭を走った。

「ラスト1000m手前ぐらいで、脚が動かなくなっちゃって......」

 最後はきつくなったが、組4着に踏みとどまり、学生トップで決勝に駒を進めた。

 そして、決勝でもその積極的な走りを見せた。

「使われましたね......」

 レース後、苦笑いを浮かべてミックスゾーンに現れた鈴木の第一声がこうだった。

「使われても(序盤で前に)出ておかないと。追うスピードは絶対にないので」

 格上の選手たちが相手でも、鈴木は自分のレースを貫きスタート直後から先頭を走った。

 鈴木が先頭を明け渡したのは3400m過ぎ。創価大の小池が先頭を走っている間は粘ったが、3800mを過ぎて塩尻和也(富士通)が先頭に躍り出てペースが上がると、じわじわと順位を落としていった。

「電光掲示板を見ながら、後ろから来るかなと思って走っていました。小池さんが来た時は対応できたんですけどね。肺は結構余裕があったんですけど、脚が......。『動いて!』って思ったんですけど、スタミナが足りなかったです」

 鈴木は10位で日本選手権を終えた。

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