箱根駅伝総合優勝へ向け中央大が春のトラックシーズンで存在感 「5強」の実力を証明 (2ページ目)
【エース、主将として責務を全うする吉居駿恭】
今季は主将としての役割も強く意識するエース・吉居駿恭 photo by Wada Satoshi 4月29日の織田幹雄記念国際陸上(広島)ではキャプテン・吉居駿恭(4年)が魅せた。
「自己ベストを狙いたかったのですが、ペースメーカーが(3000m通過が)8分5秒ということだったので、あえて後ろからいって、揉まれながら最後までいくプランでいこうと走りながら考えました。自分はレース展開がうまくないのが課題だったので」
ペースが設定よりもさらに遅かったこともあり、自己ベスト(13分22秒01)を狙うのは難しいと判断し、勝負に徹した。4000mを過ぎて満を持して先頭に立った吉居は、麗澤大の2人の留学生や石井優樹(NTT西日本)や遠藤日向(住友電工)らとラストスパート合戦を繰り広げ、その勝負に競り勝ち、13分26秒31で連覇を果たした。記録以上にそのレース内容に収穫は大きかった。
「今年1年はチームとして、一つひとつのレースで勝ちきることを意識してやっているので、キャプテンとして、ここでトップでゴールできたことは、チームにプラスになったと思います。これからもチームのみんなに刺激を与えながら、箱根優勝を目指して頑張っていきたいと思っています」
主将の吉居自ら、チームに勢いをもたらす走りとなった。
この冬は溜池と岡田がアメリカ合宿を敢行した一方で、主将の吉居はチームに残った。
昨年2月にイランのテヘランで開催されたアジア室内選手権に出場した(*イラン渡航歴があるとアメリカのビザ免除プログラムを利用できず、特別なビザを取得する必要がある)という事情もあったが、「キャプテンということもあるし、日本での練習も自分に合っていると感じているので」と吉居は言う。
吉居は主将としての責務を全うしようという心構えだ。
「引っ張っていく立場として、甘い部分を自分のなかに出さないというところを意識していて、それは自分にとってもプラスになっていると感じます。でも、『箱根で勝つ』という目標に向けて、まだまだキャプテンとして力不足だなって感じるので、もっと良いキャプテンなるように頑張りたいなと思っています」
役職が人を育てるとはよく言われることだが、このように誓っている。
なお、織田記念には溜池も出場。納得のいく走りとはならなかったものの、この大会も13分37秒12で走り、ハイアベレージをキープしている。1年時から吉居とともに箱根路を経験しているだけに、今季にかける思いは強い。
つづく
著者プロフィール
和田悟志 (わだ・さとし)
1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。
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