【箱根駅伝】関東インカレで躍進の創価大 絶対エース吉田響が卒業した「危機感」を共有し、「5強」崩しに手応え (3ページ目)
【青学大の原監督も「創価、いいですね」】
榎木監督も結果には一定の評価をしている。
「ハーフでは、野沢が優勝を目指していましたし、山口はもう攻めるだけ攻めるという意識でいい走りをしてくれました。各大学のエースが不在だったので、そのことも考えて今回、勝っておかないといけないという思いで勝負にいったと思いますが、表彰台にふたり上がったのはよかったです。(3000m障害の)黒木は(日本人トップの)2位を死守してくれましたし、(5000mの)石丸は9位でしたが、最終学年でやらないといけない覚悟が走りに表れていたと思います」
この結果を生み出している原動力は、監督の言う危機感なのだろうか、
「やはり今季は響のような頼れる存在がいないので、自分たちが自分たちの力でチームを変えていかないと、目標の3大駅伝3位以内には絶対にたどり着かない。箱根もシードを落としてしまうかもしれない。そういう危機感があるので、各選手が自覚して、自発的に動いていますし、ハーフマラソンの展開のように駒澤大、國学院大という強豪校にしっかりと仕掛けていき、勝負することができているんだと思います」
トラックシーズン前半の節目となる関東インカレで結果が出たが、ここで満足するわけにはいかないという空気がチーム内にはある。
「今回は青山学院大も駒澤大もスーパーエースが不在でしたし、上位校と比較するとうちの選手層はまだまだ足りない。國学院大は各選手が1種目ずつエントリーしていますが、うちはスティーブンと小池のふたりが2種目走っています。しかも、相手の5番目、6番目の選手とうちのトップ選手が争っているので、もうひとつ上に強い選手がいるぞというのを踏まえて見ていかないといけない。ただ、そういうなかでも個々が結果を出してくれたのは、チームにとっては大きいですね。5強と言われているなか、蚊帳の外に置かれたくないので、自分たちの存在感を示すことは今回、多少はできたのかなと思います」
実際、青山学院大の原晋監督から「創価、いいですね」と声を掛けられたという。
「声をかけてもらえることはうれしいことです」
榎木監督はあくまで謙虚に語るが、その表情には5強に食い込めるレベルに来つつあるという自信と、「やってやろう」という強い野心があふれているように見えた。
「危機感」が個々の選手の内に浸透し、選手の走りからは「自分がやるんだ」という意識が読み取れた。意識と走力が高い次元で噛み合えば、これほど怖いことはない。今季、創価大の「伸びしろ」を他大学が警戒するのも当然だろう。
著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。近著に「箱根5区」(徳間書店)。
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