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【箱根駅伝】学生個人10000ⅿでVの駒澤大・伊藤蒼唯は「Ggoat」効果で「やっと1番が取れた」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【日本のトップクラスの選手たちとのトレーニング】

 2位の野中に4秒差をつけ、28分53秒75で優勝。駒大の藤田敦史監督も満足そうな笑みを見せた。

「伊藤は強かったですね。何回かレースが動くなか、ラストスパートでしっかり勝ちきったので力がつきましたよ。クロカン(日本選手権クロスカントリー)やEXPO駅伝での走りがフロックじゃなかったことを証明してくれました。調子がいいのは努力の成果だと思います。Ggoat(ジーゴート)のメンバーと一緒に練習をやらせてもらうなかで、高い目標を見て取り組んできた成果でしょう。本当に成長したなと思いました」

 藤田監督が高く評価するように、年明け以降の伊藤は好調を維持している。

 だが、1年前の今ごろは闇の中をさまよっていた。関東インカレの2部10000mに出場したが、周回遅れとなる組25位(29分36秒55)に終わり、レース後は苦渋の表情を浮かべながら、こう語った。

「よくないですね。調整も外してしまって、走っていても体がきついし、スピードが上がらない。原因が何かもわからないし、今までないくらいうまくいっていない」

 そこから夏合宿で走り込むなどして徐々に調子を上げていった。

 箱根駅伝では山下りの6区を区間2位。チームの順位を4位から3位に押し上げ、総合2位に貢献した。2月の日本選手権クロスカントリー(シニア10km)では先頭集団でレースを進めて学生トップの4位入賞を果たし、3月のEXPO駅伝では1区を走り、区間賞の吉居大和(トヨタ自動車)と4秒差の2位で流れをつくった。

 さらに3月30日の日体大長距離記録会5000mでは、13分39秒72の自己ベストをマーク。そういう流れのなかで、伊藤は1年時の箱根6区区間賞以来のタイトル、レースでの初優勝を手にした。

「昨年は練習のなかで常に余裕を持ち続けながらやっていたので、ラストの絞り出しだったり、ハイペースで動いたりした時の対応の仕方が、うまく体に染みついていなくて、ちょっと噛み合わない部分があったんです。でも、今年はかなり追い込んで練習をしてきましたし、スピードの練習もしてきたので、今回のように途中でスローペースの展開になっても、それらをうまく生かすことができたのかなと思います」

 もともとスピードのある選手ではあるが、持続できずに後半に苦しむ展開を繰り返していた。だが、新たな練習への取り組みによって、今回のようにスローペースからラストのスパート勝負になっても動じず、勝ちきれる強さを身につけた。

 それは伊藤自身の努力ももちろんだが、藤田監督が言うように、箱根駅伝以降、Ggoatの練習に参加していることも大きい。駒大の大八木弘明総監督が指導する同チームには、駒大OBの田澤廉、鈴木芽吹(ともにトヨタ自動車)、篠原倖太朗(富士通)、さらに現役学生の佐藤圭汰(4年)らが世界で戦うことを目指し、高いレベルでトレーニングを行なっている。

「今、(大八木)総監督に練習を見ていただいているのですが、チームには(4月12日の)日本選手権10000mで優勝した芽吹さん、それに田澤さん、篠原さん、圭汰とか日本のトップクラスの選手がいます。みんなを間近に見て、一緒に練習ができているので、そこでスピードを含めてかなりレベルアップできているのだと思います」

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