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箱根駅伝2025 三冠&初優勝がかかる國學院大の成長ぶりを5年前の主将・土方英和が分析「全員が優勝だけを目がけて走っている」

  • 杉園昌之●取材・文 text by Sugizono Masayuki

國學院大の主将を務め、箱根2区を走った土方(右)。平林(左)はじめ、その姿に憧れて入学した選手は多い photo by 西村尚己/アフロスポーツ國學院大の主将を務め、箱根2区を走った土方(右)。平林(左)はじめ、その姿に憧れて入学した選手は多い photo by 西村尚己/アフロスポーツ

前編:主将OB土方英和(旭化成)が語る國學院大の強さ

第101回箱根駅伝で初の総合優勝を目指す國學院大。今季はここまで2冠を達成し、その実力を証明したうえで最大の挑戦に挑もうとしているが、今のポジションは長年にわたり、前田康弘監督が積み重ねてきた結果である。

そんな頼もしいチームの姿を、5シーズン前の主将・土方英和(現・旭化成)は、どのように見ているのだろうか。
今や学生界を代表するランナーに成長した平林清澄、前田康弘監督とのエピソードを踏まえながら、語ってもらった。

【「平林の成長はうれしさ半分、悔しさ半分」】

 2024年度は3強の一角に堂々と名を連ね、学生三大駅伝の三冠まであとひとつ。箱根駅伝で往路優勝と総合3位の目標を掲げていたのは、つい5年前のことである。

 当時、主将だった國學院大OBの土方英和は、昨日のことのように出雲路からのストーリーを覚えている。曇り空の2019年10月14日、出雲駅伝ではアンカー区間で3人を抜き去り、初優勝のフィニッシュテープを切った。

「僕たちのときは、たまたま勝ったようなものでした。実際、3位以内に入れればいいかな、と思っていましたから。今とは全然、違いますよ」

 ふと昔を思い出しながら、勝利の意欲にあふれた平林清澄(4年)をはじめ、後輩たちの活躍ぶりに目を細める。

 今年度は駅伝シーズン幕開けの出雲駅伝から驚かされた。

「チーム全員が、優勝だけを目がけて走っていましたよね。駒澤大とのアンカー勝負になったときには、正直厳しいかなと思ったんです。僕のときも前を走るのは駒澤大でしたけど、今回の相手は(10000m、ハーフマラソンのタイムで上をいく)篠原倖太朗君(4年)。それでも、平林はもっと強かった。『絶対に勝ってやるんだ』という気持ちがにじみ出ていたし、自分より速いタイムを持つ選手に挑むことを楽しんでいるようにも見えました。

 きつくなるはずの後半に時折、笑みを浮かべるなんて、僕にはできないです。あの楽しむ姿勢は、強さの秘訣なのかもしれません。一緒に話していても、いつも前向き。彼の口からマイナスの言葉を聞いたことがないので」

 平林は5歳下で大学では同じ時間を過ごしていないものの、かねてから親交があるという。今も連絡を取り合う仲なのだ。

 初めての出会いは、土方が大学卒業を控えた2020年の冬。退寮が差し迫った2月、寮で土方から声をかけ、ジョグに誘ったのが高校2年生の平林だった。多摩川沿いの走り慣れたコースに連れ出し、何気ない会話を交わした。

「ここの景色がきれいなんだよ、とか。あの頃は有望な高校生に國學院に入ってもらいたくて、一緒に走ることもあったんです」

 あれから5年。出雲駅伝初優勝の立役者に憧れて入学したランナーは、國學院大で最終学年を迎え、頼もしい主将になった。目標とする先輩と並走したジョグのコースを毎日のように走って足をつくり、いまや絶対的なエースとして君臨している。今年2月の大阪マラソンでは日本学生新記録、初マラソン日本最高記録となる2時間06分18秒をマークして優勝。土方が持つ自己ベスト(2時間06分26秒)のタイムまで抜いてしまった。後輩の快挙について水を向けると、思わず苦笑を漏らした。

「先輩としてうれしさ半分、同じ競技者として悔しさ半分って感じです。今もあのジョグのコースを走っていると聞いて、それには驚きました」

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