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東海大駅伝の黄金世代・羽生拓矢が実業団で躍動 同期には「苦しんで、でもやめるなって言いたい」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

 そうして9月の中京大学土曜競技会で5000m13分40秒26をマークし、高2以来6年ぶりの自己ベストを更新した。つづく10月の中部実業団選手権の10000mでも28分20秒10で自己新をマークした。

「この時は自己ベストを出せる感覚はなかったんですけど、積み重ねてきたものがうまく出せた。ここまでやってきた練習が正しかったんだなと思いましたね。これを普通に続けて行けばいいんだって思えたのは大きかったです」

 12月の日本選手権5000mでは13分35秒88の自己新をマーク。実業団2年目となる21年9月の大会では、5000m13分28秒82をマークして自己ベストを更新。22年11月の八王子ロングディスタンス10000mでは日本歴代4位の27分27秒49を叩き出し、23年1月1日のニューイヤー駅伝では6区区間賞。目覚ましい活躍で、陸上ファンや競技者、他チームに"羽生復活"を印象付けた。

「結果だけ見たらうまくいっているように見えますけど、ケガもけっこうありましたし、監督と意見がぶつかることや噛み合わないこともあります。でも、実業団って大学のように4年間を約束されているわけではない。ケガした時やうまくいかなかった時でも、お金をもらっている以上、責任を持って練習をしなきゃいけないって考えるようになったんです。ケガが治るのを待つんじゃなくて、治るまで何をしておくべきか、早く治すにはどうすべきか。ケガをした時の取り組みや考え方もすごく変わりました」

 実業団4年目のシーズンが終わり、2024年4月からは5年目のシーズン。山あり谷ありの陸上人生だが、それでも5000mや10000mのトラック種目で確実に結果を出してきた。これから羽生は、何をターゲットにして陸上をつづけていくのだろうか。

「まずは今、継続していることを今後も積み重ねていきたい。それが自己記録や日本記録の更新、日本選手権での優勝につながって、その先に五輪や世界陸上が見えてくるのかなと思います。ただ、個人的には、世界の大会を目指して突っ走るというよりも、もう寄り道しまくって、それで辿り着けたらいいなぁってイメージです。僕の一番大きな目標は、陸上を長く続けることです」

 五輪や世陸に出ることではなく、長く競技を続けることはシンプルだが大変なことでもある。実業団は、結果が出なければクビを宣告される厳しい世界であり、単に競技をつづけたいだけで長くいられる世界ではない。

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