「何でトライアルにピーキングを合わせなきゃいけないの?」髙橋萌木子がロンドン五輪直前に感じていた練習内容への不安と疑問 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【なぜこのタイミング?で行なわれたトライアル】

「出場が決まったあと、いつだったか忘れましたがフランクフルトの事前合宿で100mのトライアルをやるという知らせを書面でもらい、『何でこのタイミング?』と思いました。私は走るなら2走だからスターティングブロックを使う必要がないので、日本選手権以降は120mをしっかり走れるように、スタンディングスタートからの加速走に徹してずっと作り上げていました。それまでは大体オーダーは固定されていて、自分の走順に徹してバトンの精度を高めていくほうを大事にしていて、そこでタイムが出る人から選ぶみたいな感じでした」

 合宿でもバトン練習をする場合、髙橋と福島は2走と3走に入るため、ふたりは他の3人よりやることが多かった。

「私とチー以外は1走と4走の可能性があるので、私もチーもバトン練習では3人全員と合わせなくてはいけない。回数が多くなるので疲労は出てくるし、それに加えてチーとの2-3走のバトン合わせもあって、チーは本当に速いから、集中して質を高めないとしっかりできない。だからこそ練習をもう少しシンプルにして欲しかったですね。バトン練習も3パターンあると1日でやるのは難しいので、日にちを別にして他の組み合わせでやったりしていました。そう考えると質の低い練習だったと思いますし、『この時期の代表でやるべき練習なのかな』と感じていました。他の3人も不安になっているのがわかったので、早くメンバー発表をしてもらいたいとコーチに聞きにいっても答えてはくれなくて......」

 トライアルへ向けたスターティングブロックからの練習はしなかった。「できなかったですね。私がやるとしたら2走だと思っていたので、トライアルに備える必要はまったくないと思っていました。一番走らなければいけないのはロンドンの予選の日だから、『何でわざわざトライアルにピーキングを合わせなきゃいけないの?』と思って。ここで合わせたら短期間でもう一度ピークを作るのは不可能だから、『ここは通過点でスタブロは絶対に使わない』と思っていた」という気持ちでトライアルに臨んだ。

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