引退寸前からMGC出場へ 細田あいが高橋尚子からのアドバイスを受けて描くレース展開 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by YUTAKA/アフロスポーツ

【実業団を移籍し再スタート】

 20211月、細田はダイハツからエディオンに移籍した。

 日体大時代にダイハツに勧誘してくれた沢栁厚志コーチがちょうどエディオンの監督に就任したのが大きなキッカケになった。

「環境を変えることで、新しい気持ちでやれると思いました。同時に新しい場所で競技を続けると決めたので、覚悟を持って挑み、結果を出さないといけないという気持ちになりました」

 20216月の日本選手権5000mでは、廣中璃梨佳(日本郵政)や新谷仁美(積水化学)、田中希実(当時・豊田織機/現・New Balance)ら強力なランナーと競り合って5位に入賞し、走力が戻ってきていることを実感できた。

「この頃は、自分でもびっくりするぐらい走れました。4月に行なわれた日体大記録会に高校の先生と大学の先生がいらっしゃって、新しいユニフォームをお披露目しました。そして3000mで、90809で当時の自己新記録を出しました。スピード練習をガンガンしていたわけじゃないですけど、走り込みができていましたし、気持ちが切り替わったのもあって、いい走り出しができました。それが日本選手権にもつながっていったので、もうノリノリな感じで走れていましたね」

 ケガが治り、練習メニューもしっかりと消化できるようになった。基礎を固められたことで、走りが安定してきた。

 2022年、名古屋ウイメンズでは2時間2426で総合4位に入り、MGCの出場権を獲得。さらに勢いはつづき、10月のロンドンマラソンでは2時間2142秒の自己ベスト、日本歴代8位のタイムを出した。 

 このレースで得たものは、細田にとって大きな財産になった。

「本番まで一度もケガすることなく練習を積めたのが大きかったですね。過去3回は、レース前の練習で故障して何日も離脱し、レース中にケガもしたんです。でも、この時は一度もケガすることなく、練習が積めてトラックの流れをそのままつなげることができた。そこでタイムが出たので、ケガせずに走れたら結果がついてくるという当たり前のことにあらためて気付きました」

 さらに、自分の新たな一面に気付くこともあった。海外のレースは、日本のように時間がきっちり守られる感じではなく、集合時間になってものんびりしている。コースに移動する出発の時間が遅れたり、到着時間がアップの時間を過ぎていたり、「えぇ?」と思うこともあったが焦らず、臨機応変に対応できた。

 ケガなく走れたことは良かったがレースに目を転じると、トップとの差は8分近くあった。記録は日本歴代8位でも成績は総合9位で、世界との差をまざまざと見せつけられた。

「こんなに差があるんだなっていうのが分かったし、オリンピックではこういう人たちと戦うので、まだまだ力が足りないなと思いましたね」

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