東大医学部卒の三段跳インカレ女王・内山咲良が引退を決めた理由「研修医と陸上の両立は迷いもあったけど、すごく尊い時間でした」 (3ページ目)

  • 一ノ瀬 伸●取材・文 text by Ichinose Shin

【ケガで大会辞退、みっともなく涙が出た】

ーーケガは今年6月の日本選手権直前でした。

 試合まで2週間をきったくらいの時期でした。すぐ整骨院へ行って数日休んで、行けるかなと思ったんですが、競技場へ行ってみると脚が動かせず。また日を少し開けて走りに行ったけど、ダメで。

 日本選手権は両親も見に来てくれる予定だったし、周囲にも出ると言ったあとにケガをしてしまったので、頭のなかでぐるぐると考えたんですけど、この状態では出ても試合にならないなと。それで出場を辞退しました。

ーー同時に引退を決めた。

 日本選手権の次の試合はなんだろうと調べてみたら7月末でした。でも、それまでに治るかわからないケガを抱えながら、また陸上のためにいろんなものを犠牲にして続けていけるかと考えた時に、ちょっとなんか無理だなって思ってしまいました。

 人生のすごく大きな決断を最後はあっけなくしてしまうのかなという気持ちもありましたが、陸上を続けるのも続けないのも苦しいなと思いつつ、手を離してしまった感じでした。明るい話ではないですが、最後は逃げたような形になったことに後悔は残っていて。やめると決めた時にはみっともなく涙が出てきてしまいました。

 泣いてしまうというのは、中学生からずっと続けてきたことを手放して悲しいというのと、最後の瞬間に自分の可能性を信じきれなくなったことが悔しいという気持ちもあったり。あと、やっぱり自分は陸上が好きだったんだなというのも実感しました。

現役時代の日々を振り返る内山さん 写真/スポルティーバ現役時代の日々を振り返る内山さん 写真/スポルティーバこの記事に関連する写真を見るーー引退発表の反響はいかがでしたか?

 日本選手権が近づいてきた頃に、「頑張ってね」とメッセージをくださる方もいたので、ちゃんと言っておかないと、と思ってSNSで引退について書きました。

「もったいない」と言ってくれる人もいましたし、「お疲れさま」とか肯定的な言葉をかけてくれる人が多くて、本当にありがたかったです。こんなに応援してもらっていたんだなと感じました。

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