池田耀平「このままダラダラとトラックをやってていいのか」MGCは辞退もパリ五輪は目指す「2時間3分台は狙えるところにある」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 森田直樹/アフロスポーツ

2時間3分台は狙える】

 池田は、まだ日本代表のユニフォームを着て走った経験がなかった。

 仮にアジア大会の代表の座を捨てて、MGCを走っても2位以内に入れなければ、パリ五輪の代表にはなれず、MGCを走った経験だけで終わってしまう可能性もある。一方、アジアの舞台で日の丸をつけて走ることは、経験としても次のステージを目指す意味でも大きいと監督に言われた。

「監督やコーチの意見を聞いて、いろいろ考える中で、アジア大会で日本代表として走った後、その先のことは考えていけばいいかなと思い、10月のMGCは出場しないことを決めました」

 だが、パリ五輪を諦めたわけではない。

 MGCでは2位内に入れば、自動的にパリ五輪、日本男子マラソン代表選手に内定するが、もう1枠残っているのだ。MGCファイナルチャレンジの対象レースである福岡国際や大阪マラソン、東京マラソンで設定タイムの2時間550秒を上回って優勝すれば、ラストの1枠を獲得することができる。

「もし、MGCに出なければ完全にパリへの道が断たれるということになれば、僕はMGCを選んだかもしれません。でも、来年3月の東京マラソンまでファイナルチャレンジがあるのでチャンスは残っています。今回、無理に65名の選手と競って2枠を争うよりもアジア大会で日本代表として走る経験を積んで結果を出した後で、最後の1枠に挑戦したい。アジア大会から東京までは半年ありますので、もう1回トラックでスピードを磨いて、ファイナルチャレンジで勝つことを見据えながらやっていきます」

 池田は、世陸や五輪に出るだけでは意味がないと考えている。

 マラソンの世界は2時間2分、3分台が当たり前になりつつある中、アフリカのトップランナーと戦うには、どうすべきか。自分で方向性を見出し、今後も強化を続けていく覚悟だ。

「ケニアを始めアフリカ勢と比較すると日本人はスピードで難しい部分があって、マラソンをするとどうしてもマラソンだけにフォーカスしすぎているのを感じていました。僕は、もう少しトラックで叩いてスピードをつけていけば、足りない部分を補えるんじゃないかと思っています。トラックで日本のトップレベルのタイムを出してマラソンに活かしていければ、2時間3分台は狙って行けるところにある。それが今、自分が一番やってみたいことですし、取り組んでいることでもあります。新しいパターンですけど、うまくかみ合わせて世界で結果を出していきたいですね」

 池田のトラック&マラソンの二兎を追うスタイルは、アフリカ人のようにトラックからマラソンに移行するという時間のロスをなくし、マラソンでの可能性を広げてくれることになるかもしれない。それが実を結べば、池田はまだ誰も見たことがない景色を見られる選手になれるだろう。

プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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