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「なぜ義務感に追われながら走っているのか」マラソン秋山清仁は動画から刺激 MGCは「テレビに長く映ってアピールしたい」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 日刊スポーツ/アフロ

【マラソンで思いどおりにいかない日々】

 初マラソンは、2021年2月のびわ湖毎日マラソンだった。

「このレースは、鈴木健吾選手(富士通)が2時間4分台を出して、僕は2時間15分35秒でした。同じレースを走って、なぜ、そんなに出るの?って感じでしたね。ただ、この時は、前日にエネルギーぎれしないようにご飯をたくさん食べたらハーフ付近でトイレを我慢できなくなって。このトイレの分を差し引いて、もっと積極的に行けたら違う結果が出たはずなので、次はミスせずに走りたいと思いました」

 びわ湖でマラソンを1度経験したことで自分に足りない部分やレース中におけるペース配分など、いろんなことを学ぶことができた。2022年は1月の大阪ハーフマラソンで61分23秒のタイムを出し、自信をつけた。いい流れで3月、東京マラソンに挑戦した。

「1月、予選で負けてニューイヤー駅伝に出場できなかったので、会社の名前を残そうと大阪ハーフを150%の力で走ったら2月はヘロヘロの状態になり、これで東京走れんのかっていう状況でした。最初はキロ2分57秒ペースで2時間8分台とか狙っていたのですが、スタート直後から動きが悪くてキロ3分から3分を超えるペースを維持する走りになってしまったんです。タイム的には自己ベストだったのですが、殻に閉じこもった走りをしたなという思いがずっと残っていました」

 東京マラソンは、2時間10分58秒で33位だった。 

 翌年、大阪マラソンか東京マラソンでMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の出場権を獲得するというプランでいたが、「レースを1本に絞ってMGCを獲れるのか」という不安が徐々に膨らんできた。その前にレースをひとつ挟んでいくプランに変更し、12月の福岡国際マラソンへの出場を決めた。

【2022年の福岡国際マラソンで日本人トップ】

「東京でのタイムがあったので、2時間9分2秒でゴールすればワイルドカードでMGCを獲れたんです。福岡で決めるという気持ちでしたね。ただ、タイムを狙うにしても30キロまで先頭集団についていかないと話にならないので、そこまでは喰らいついていく覚悟でいました。でも、30キロ手前できつくなり、給水に集中していたら他の日本の選手に先を行かれてしまって......」

 給水のタイミングで30キロ過ぎに一度、先頭集団の後方に下がった。だが、そこから粘りの走りで落ちてくる選手を拾い、39キロで日本人トップの赤崎暁(九電工)を捉えた。

「2時間9分2秒をきることだけを意識して走っていたら、いつの間にか前に出ていた感じでした。逃げられたと思った選手が近づいてきたのは、大きかったですね。あそこで人がいなかったら気持ち的にきつかったと思うんですが、最後、粘って力を出せたのは前に赤崎選手がいてくれたおかげだと思っています」

 秋山は、2時間8分43秒で日本人トップ、総合7位でゴールし、MGCの出場権を獲得した。このレースは、自己ベストを出せたこともあり、秋山にとって多くを得られたレースになった。

「今まで殻に閉じこもっていたというか、ここで行ったら後半もたないんじゃないかとか、余計なことを考えて走っていたんです。この時は2時間9分2秒を出すこと、結果を出して会社の名前を出すこと。それだけを考えて走ったら結果が出たんです。余計なことを考えずに走れば結果が出る。その経験ができたことで、ひとつ自分の殻を打ち破れた感じがしました」

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