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女子マラソン松田瑞生、予定外の孤独な戦いとなるも「万全なら戦えた」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

つらい状況でも強い走り

 しかし、そこからは彼女らしい、心の強さと存在感を見せる粘り強い走りをした。4kmを過ぎてからは、2時間21分台を狙える1km3分20~22秒ペースの安定した走りで前を追いかけた。

「今回はもう、前半も中盤も後半も『これが自分の精一杯の力』という感じだったので、最初からすべて全力でした。5kmを過ぎてからひとり抜いたあとにうしろからついてこられたけど、自分がその人のうしろにつけばドンドンペースが落ちていくだけだと思ったので、とにかくいけるところまで攻めていこうと、全力を尽くしました」

 中盤になって第1集団と第2集団もバラけ始めたところで、松田はペースを維持し続け、中間点過ぎには順位を12位に上げた。そして、序盤は先頭集団を走っていた選手の内、ふたりが31km、35km過ぎでレースを止めると10位に。ペースが落ちるのを必死にこらえ、8位集団とは8秒差まで詰めて入賞の可能性も感じさせる走りをした。

 そして37kmを過ぎたところで、ひとり抜いて9位になると、徐々にタイム差を縮めていった。ここまで8秒差だった8位とのタイム差を、39kmで4秒差、40kmで3秒差、41kmでは2秒差と執念の走りだった。

「あの時はもう前だけを見据えていたので、ひとつでも前に、1秒でも前にと思ってずっと走っていました。途中で9位だと言われていたので、それが8位争いだとわかっていたけど、もうずっと全力だったので、ラストの足が残っていませんでした」

 息が詰まるような長い、長いケイラ・ダマート(アメリカ)との熱走。最後は突き放され、入賞には15秒届かない2時間23分49秒の9位でゴール。

 その熱い走りに山中コーチも感激の言葉を口にする。

「正直、私は『もう完走してくれれば十分だな』と思った時もあったので、8位入賞まで手が届きそうなところまで来てくれたことに関してはもう上出来だと思っています。彼女はその結果にも納得していなかったけど、十分に楽しませてもらったし、松田自身の競技に対する熱意が伝わってきたのでありがたいと思いました」

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