箱根の名選手がぶち当たるトラック競技の厳しい現実「世界で勝つしかない」 (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

「シンプルに言えば、日本人が世界で戦える競技ではないからだと思います。5000mも1万mも世界との差はなかなか縮まらない。女子サッカーも以前はそれほど注目されていませんでしたが、W杯で優勝してから一気に盛り上がったので、そういうチャンスは中長距離にもあるのかなと。僕はその競技を引っ張っていく選手になりたいですね」

 これからはトラックの長距離(5000m、1万m)で勝負すると決めている。幸い、チームには日本代表クラスの選手がふたりもいる。

「1万mに田村選手、5000mに遠藤(日向)選手がいて、すごく刺激になっています。間近で質の高い練習を見ることができ、自分ももっとやらなければという気持ちにさせてくれますし、ふたりの存在というのは本当にありがたいです。2、3年後には世界の舞台に立てる選手になりたいです」

設楽悠太が受け継ぐ「ホンダイズム」>>

 本当にやりたいことが見つかり、世界への視野が広がったが、実業団になっても駅伝は続く。だが、駅伝そのものに対する考え方は大きく変わったという。

「大学時代も明治の看板を背負い、多くの人に応援されたんですけど、会社のほうが身近というか、すごく応援してくれますし、その人たちのためにも結果を残したいと強く思うようになりました」

 ニューイヤー駅伝で阿部の希望区間はどこなのだろうか。

「4区です。ずっと4区を走り続けられるランナーでいたいと思っています」

 4区はニューイヤー駅伝で最長の22.4キロで、ラスト3.5キロの上り坂と向かい風が強い厳しい区間だ。それだけに各チームの主力が集うエース区間として定着している。はたして4区を勝ち取れるのか。阿部のニューイヤー駅伝のデビュー戦が楽しみだ。

 まずはここでしっかりと結果を残し、世界的なランナーになるのが最大の目標だ。

「その自信、あります」

 そう語る阿部の表情には、強い決意があふれていた。近い将来、住友電工の黄金期を支える"柱"になるだろう。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る