東大出身ランナーも世界を目指すGMO。実業団陸上の試行錯誤 (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 ただMGCはあくまで東京五輪のマラソン代表を決めるレースであって、恒常的に開催される大会ではない。

 実業団には1月1日に開催されるニューイヤー駅伝があるが、この翌日に開催される箱根駅伝に飲まれ、もうひとつ盛り上がりに欠ける。

「陸上の大会はどうしても記録ばっかりになり、エンターテインメント性に欠けていると思います。でもMGCは記録ではなく、勝負を見せるレースになり、エンターテインメント性に満ちていました。そのようにマラソン本来の面白さを伝えられるものがあったほうがいいと思います。たとえば、記録会が多く開催されていますが、整理してこの記録会は各チーム5名ずつ出して、それをポイント制にして1シーズンで年間王者を決めるとか。個人で戦うのをうまくチームにつなげられると面白いと思いますし、戦うことをメインにした大会をもっと考えていくべきだと思います」

 今年はコロナ禍の影響で多くの大会が中止、延期になったが、チームとしては2021年の幕開けとなるニューイヤー駅伝が大きな目標になる。

「ウチのチームはもともと個人競技に集中してやっていたので、駅伝をやろうという話になった時は戸惑う選手もいました。駅伝を走るとなると、スピード練習に時間を取られるなど、マラソンがメインの選手には少なからず負担になる。ですが、私はプラスの部分もあると感じています。マラソンで2時間7、8分台の記録が出るようになったが、ウチは最後のスピードの部分で苦手な選手が多い。駅伝はスピードがないと勝てないので、その強化を図るためにも駅伝参加はいいことだと思っています」

 漆黒のユニフォームをまとった佇まいは、ラグビーのニュージーランド代表・オールブラックスのようだ。新たな個性派集団が、日本陸上界に新たな息吹をもたらしている----。

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