大迫傑の日本新記録樹立が示す「日本男子マラソン界の進化」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 42.195kmを一定のハイペースで押し切れることはほとんどなく、落ちていくのが普通。記録を狙うためには速いペースで入り、終盤の落ち込みを抑えて粘るのが常道だ。東京五輪代表を目指すうえで2時間05分49秒以内を出すと考えれば、井上と大迫にほぼ絞られた。

「あそこが一番走りやすかった」と言うように、ペースメーカーのすぐ後ろの位置で走っていた井上は、最初から積極的な姿勢を見せていた。彼を指導するMHPSの黒木純監督も「2時間05分49秒ではなく、2時間4分台を狙ってきたし、いい状態に仕上げられたので狙えると思っていた」と言う。

 下り坂になる最初の5kmは設定どおりに14分32秒で通過。その後は14分40秒、14分46秒、14分43秒で落ち着き、ゴール予想タイムは2時間3分台後半から4分台の展開になった。中間点通過タイムは、井上と大迫を含む先頭集団は1時間01分58秒から02分で、第2集団も1時間02分21~22秒と、2時間5分台の可能性を感じさせるペースだった。

 その後、レースは外国勢が力を発揮し始めた。そのため、早野忠昭レースディレクターは、「それまでは2分55~58秒ペースになって海外選手たちが少し焦れていたので、ペースメーカーに2分51~52秒ペースに上げるように指示をした」と言う。

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