大迫傑の日本新記録樹立が示す「日本男子マラソン界の進化」 (3ページ目)
結果的に大迫はその変化に対応できず、23kmから遅れ始めた。さらに井上も24km過ぎから対応できずに遅れ始めたが、うまく追走集団に入って設定記録突破への可能性を見せていた。25㎞地点で井上と7秒差となった大迫の走りはやや硬く見えたが、徐々に冷静さを取り戻すと、本来の力を発揮し始めた。
大迫は井上のいる第2集団にも離された時、こんなことを考えていたという。
「『追いつくぞ』と思うのではなく、いかにリラックスして自分のリズムを立て直すかを考えていました。離されたところでちょっと休み、自分のリズムを取り戻そうと思っていました」
25~30kmは、井上がいた5人の集団が15分03秒で走っていたのに対し、少し遅れて走っていた大迫は15分08秒でカバー。その5kmで5秒しか差を開かせなかったことがポイントになった。31km手前からは大迫の動きが戻り、32km過ぎで井上のいる集団に追いつくとそのまま先頭に立った。
「追いついた時に集団のペースがちょっと遅いかなと思ったし、表情を見ると井上くんを含めてきつそうだったので、ちょっとチャレンジしてみようと思いました。いつもだったらああいう場面では少し後ろに控えるんですが、ケニア合宿では、より質の高いボリュームのある練習もできていたし、あと10kmならいけるかなと思って前に出ました」
3 / 5