阪口竜平が日本選手権初V。まったく歯が立たず→1年で好敵手に勝利 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Nakamura Hiroyuki

 日本選手権では予選1組を走り、8分3585の自己ベストを出し、3位で通過。決勝で塩尻との対決を前に、阪口はレースのイメージをこう描いていた。

「塩尻さんはどんなレースでも前に出て、積極的なレースをしている。でも逆に言うと、ラストはそれほど自信がないから、最初からガンガンいっていると思うんです。GGN(ゴールデンゲームズ in のべおか)の5000mもラスト1周で67秒かかるなど、ラストスパートにそれほど自信がないというのが塩尻さんの弱点だと思うんで、僕がラスト2周までしっかりついていけば勝てると思います」

 レースは阪口の狙いどおりの展開になった。スタート直後から先頭を走り、積極的にレースを引っ張る。塩尻は中間にポジションを取り、様子を見ながら走っている。塩尻は予選で世界陸上への参加標準記録を突破しており、阪口は「最初から前に出てこないだろう」と読んでいた。ただし、終盤にロングスパートをかけて勝負してくると思っていた。

 ラスト4周になった時、塩尻が前方にポジションを移動させてきた。ラスト3周ではともにスピードを上げ、デッドヒートが始まった。「お互いに前を譲らない展開になったので、タイムがよくなった」とレース後に阪口が語っていたが、ここからが本当にハイレベルな戦いとなった。

 ラスト1周の鐘が鳴り、さらにギアが入る。300m付近のハードルで阪口はインサイドから抜きにかかった。阪口がハードリングして前に出した手と、ハードルに足かけをした塩尻の足が接触。ふたりは体勢を崩して着地し、その直後に阪口が先行した。そして次のハードルで塩尻が転倒し、そこで勝負は決した。

「あとはタイムとの勝負でした」

 ドーハ世界陸上選手権の参加標準タイムは8分29秒00だ。このレース、阪口の1000mのラップは2分53秒、2000mは5分40秒だった。ラスト1周を70秒で走れば余裕でクリアできる状況だった。

 最後の水郷前、西出仁明(のりあき)コーチの声が飛ぶ。

「(標準記録を)切れるぞ、切れるぞ!」

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