「世界に出ても恥をかくだけ」新谷仁美がアジア2位も悔しさを露わ (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Yuya NAGASE/PHOTO KISHIMOTO

 今回のレースで、思い描いていたコントロールができたか問うと、「正直、今の私にはそんな力はないと思うので、今回はただ30分台を狙える74秒台前半のラップで押すことだけを意識した」と言う。

「今回はメンタルも含めて課題がありすぎる感じです。今回のタイムは世界には通用しないものだし、出ても恥をかくだけ。とりあえず、74秒台前半で押し切れる力をつけなければいけないし、その後はスピードの切り替えなどに取り組んでいく。一度ペースをつかめば、それでずっと押していけるので、そこをコーチの横田真人さんとしっかり相談して質を上げていきたいなと思います」

 1位を獲るためだけに復帰したという強い思い。この大会でも「1位以外には意味を見出せない」と、ゴール後も日の丸を持った写真撮影や挨拶を薦められても拒否。

「2位で誇らしいと思ったら、悪いですけど、この世界では生きていけないと思う。2位で満足するなら私はここにいません。レースに出る限り、まだ復活途上というのは関係ないし、プラスに考えればここではやるべきことを突きつけられたと言えますが、負けにプラスはないと思う」と強い口調で話す。

 頑なに勝利を目指す新谷。理想である74秒で押し切ることができたら、次は73秒台で押し切ることに挑戦していくのだろう。来年の東京五輪までにどこまで作り上げられるのか。アジア選手権で彼女は、強い意思を見せてくれた。

 それは24日に逝去した、かつての指導者、小出義雄氏の世界一を狙う意識を引き継ぐような姿勢だった。

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