すべてはMGCで勝つため。神野大地が
2時間5分台で走れる体に改造中 (3ページ目)
中野は言う。
「東京マラソンの後半、あれだけタイムを伸ばすことができたのは、神野にパワーがあるからなんです。あれがきついトレーニングをしている選手の走りなんですよ。あのシーンを見て、レイヤートレーニングをしていてよかったなと思いましたね。レイヤーは後半きつくなった時、どう体を動かすのかってことができるのかというトレーニング。その成果を神野はレースで証明したと思います」
そう言って中野は笑みを浮かべた。ただ、すべてが順調だったわけではない。計画では、MGCは昨年のベルリンマラソンで取れている予定だった。だが、東京マラソンまで引っ張ってしまった。そのため、MGC本番までにやれることが限定されてしまった。
行く手を阻んだ最大の原因が腹痛だった。ベルリン、福岡国際と2レース続けて腹痛が発症し、本来のレースができず、MGCを取ることができなかった。「神野=腹痛」とメディアで取り上げられ、本人はもちろんスタッフもナーバスになった。
しかし、東京マラソンでは腹痛が起きなかった。
その要因について神野は「腹痛を受け入れて戦うとか、出てからが勝負だとか、そういう思いでやっていたら今回は出なかった。成功体験をひとつ得られたことは大きかった」と語った。医学的検査では内臓に問題はなく、腹痛はメンタルによるものだと神野は東京マラソンで実感したわけだが、中野は「腹痛の対応」についてトレーナーとして反省点が大いにあったという。
「今までの私は、神野の腹痛をなんとかしてあげようという気持ちが強すぎたんです。その思いが言葉や行動に出てしまい、神野の頭の中に"腹痛"を擦り込ませてしまった。それが腹痛の大きな要因になってしまったのかもしれません。今回は一切そういう話も行動もしなかった。その結果、腹痛が起こらず、神野が持っている本来のメンタルの強さが出た。それがあったからこそ15キロ付近で落ちた時も冷静に対応し、後半に盛り返すことができたのかもしれません」
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