調整は完璧も神野大地に再び悪夢。
ベルリンマラソン途中棄権のワケ

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

―― 腹痛が起きた時、「なんで、また」という気持ちにはならなかった。

「腹痛が起きて悔しかったけど、後悔はなかったので、涙は出ませんでした。じつは7月の函館マラソンでも16キロ付近で腹痛が起きていたんです。その後、ケニア合宿、オランダを経て、ベルリンマラソンのスタートラインに立った時点で誰も後悔しない完璧な対策をしてきたので今回、起きてしまったことはしょうがないと思っています」

 昨年の福岡国際マラソン以降、腹痛対策を練ってきたトレーナーの中野は相当のショックを受けていたという。無理もない。今度こそとの思いで神野をベルリンの舞台に万全の状態で立たせたのにもかかわらず、完走どころか棄権させてしまったのだ。そのショックは推して知るべきだろう。

―― 解決策は見えているのだろうか。

「これというのはまだないですね。東京マラソンでは内臓脂肪をつくらずに32キロ付近で痛みが出て、ベルリンでは内臓脂肪を作って31キロで痛みが出た。いよいよ内臓脂肪の問題はないというので、中野さんは手術も含めてやれること全部やっていこうと言っていました。僕自身も腹痛が出なきゃいい、出たらダメじゃなく、出てもそれに耐えられる精神力を磨くとか、メンタルのところも先生とコンタクトを取って、考えられることを全部やっていこうと思っています」

 ベルリンマラソンでは、ケニア人のキプチョゲが2時間1分39秒という世界新記録を出して優勝した。日本記録は10月7日、シカゴマラソンで大迫傑(すぐる)が更新した2時間5分50秒だ。世界は1分台に突入し、さらに高速になりつつある。目前で世界記録を見た神野の目に2時間1分はどう見えたのだろうか。

―― キプチョゲの記録を同じランナーとして、どう受け止めましたか。

「ケニアに行った時、みんなに『キプチョゲと(ウィルソン・)キプサング、どっちが強いの』って聞くと、100%全員キプチョゲだったんです。キプサングも強いけど、彼は仕事で忙しい。でも、キプチョゲは1年365日、24時間マラソンで勝つことを考えている。みんな、彼の結果にリスペクトしているというよりも、彼の陸上への取り組み方を尊敬しているんです。実際、今回、結果を出したので、みんなのいう通りだなって思います。今の自分には2時間1分はすごいなってしか思えないけど、すごいなって終らせてしまうと自分の進歩も終わるし、世界との差も広がっていく。自分もいつかそういうタイムに届く選手になりたいですね」

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