2018.10.20

調整は完璧も神野大地に再び悪夢。
ベルリンマラソン途中棄権のワケ

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

神野プロジェクト Road to 2020(19)
ベルリンマラソン編

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「完璧な準備ができた」

 ベルリンマラソン前夜、神野大地はそう思っていたという。

 福岡国際マラソン、東京マラソンと続いて起きた腹痛は、ドクターによる検査などの結果、内臓脂肪が薄いために、内臓と横隔膜がすれて発生するということが要因のひとつではないかということになった。

 その予防対策としてレース直前にフルーツの缶詰などを摂取り、内臓脂肪を蓄えて走るようにした。ベルリンマラソン前は体に負担がかからないように内臓脂肪をつけられる食生活を栄養士に指導してもらい、ヘモグロビンの数値も15以上を維持していた。

満を持して挑んだベルリンマラソンだったが、まさかの途中棄権となった神野大地 練習も故障なく終えられ、トレーナーの中野ジェームズ修一曰く「これで走れない理由はひとつもない」というほど調整は完璧だった。

「目標の2時間8分台は十分狙えるコンディションでした」

 9月19日、ベルリンマラソン、神野は自信満々でスタートラインに立った。

 スタート後、キプチョゲが走るトップ集団ではなく、後続の大きなグループに入って2時間8分台を目指した。ストライドが大きく、足の運びもスムーズになり、ケニア合宿の成果が走りからも見られた。予想タイム以上の結果を出すのではないかという期待が高まった。

 だが、31キロ付近、悪夢が起きた。

 キリキリと差し込むような痛みが腹部の真ん中に起きたのだ。まさかの事態に神野は激しく動揺した。

「戦意喪失という感じでした。腹痛が起きたショックが大きすぎて、頑張れなくなってしまったんです」

―― リタイヤするまで4キロ走っていますがその間、何を考えていたんですか。

「自分はMGC(マラソングランドチャンピオンシップへの出場権) を獲得するために2時間11分42秒というタイムを出さないといけなかったんですが、ペースが落ちてきて、そのタイムとのにらめっこになったんです。4キロを走りながらそれが100%クリアーできないとなった時、もう次だなって思いました」

―― 途中棄権という判断にスパっと切り替わった。

「正直、途中でやめるのは一生残ることですし、棄権は一度もしたことがなかったんで決断は苦しかったです。残り7キロを走ってゴールしたら違う景色が見えていたかもしれない。でも、現実はタイムが切れないし、ここで無理してしまうと次に向けての練習再開が遅れてしまう。MGCのレース(2019年9月以降開催予定)まであまり時間がないなか、ここでやめる決断をして次に向けた方がいいだろうと思ってやめました」