記録よりも勝つこと。サニブラウンが教えてくれた「短距離走の本質」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki/PICSPORT

 8月9日の世界陸上男子200m準決勝。向かい風0.3mと3つの組の中で最も条件が悪い第2組を走り、1位のジェリーム・リチャーズ(トリニダード・トバゴ)には0秒29差をつけられたものの、20秒43で2位になったサニブラウン・アブデル・ハキーム。レース後の第一声は「いやぁ、ラッキーでしたね」。その口調には、いつもの彼には感じられない高揚感があった。

200mでは決勝の舞台を経験したサニブラウン・アブデル・ハキーム200mでは決勝の舞台を経験したサニブラウン・アブデル・ハキーム サニブラウンが準決勝でラッキーだったことと言えば、100m予選で競り勝った不調のヨハン・ブレーク(ジャマイカ)と再び同走になったこと。19秒台を出しているメンバーはリチャーズだけだったこと、集中して走れる一番外側の9レーンだったことの3つだろう。

 スタートからスムーズに加速して、他の選手を少しリードしたままカーブを走り、直線に出た時はリチャーズに次ぐ2位だった。

「後半になっても誰も来なかったので、このままいけるのかなと思いました。今日は最初の100mに集中していて、そこで、いい具合に乗れて走れたのでそれがよかったと思う。決勝進出の実感はあまりないですが、決勝では後半の100mも、もっと足を回すようにして、今日は若干足が流れていたから、そこをまとめて、決勝へ行くだけではなく、しっかり戦えるように、もう一段階上げていきたいと思います」

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