100m日本記録保持者・伊東浩司から日本陸上界への提言
昨年10月、2年間の任期が満了し、伊東浩司氏(10秒00の100m日本記録保持者)が日本陸上連盟の男子短距離部長を退任。後任には苅部俊二氏が就任した。
今回、伊東氏が短距離部長としての2年間を振り返り、2016年のリオデジャネイロ五輪へ向けて、選手や連盟に今後なし遂げてもらいたい改革案について語ってくれた。
2年間短距離部長を務めた伊東浩司氏(写真右)。桐生祥秀らを指導した「もっとも苦労したのは、競技カレンダーへの対応です。たとえば、昨年5月末に世界リレー選手権が新設されたうえに、国際陸連も情報を小出しにするので......。2015年8月の世界陸上(北京)の出場標準記録も去年の11月中旬になってやっと発表されたほどでした。
その後、7月の日中韓3カ国交流陸上(中国・金華市)や、9月のコンチネンタル杯(マラケシュ)(4年に一度開催される大陸別対抗戦。日本選手はアジア代表としてアジア陸連から指定された種目に出場)があっただけでなく、8月末のデカネーション(フランス陸上競技連盟主催で開催されている国別対抗戦。男女各10種目を行ない合計得点を競う)への参加も決まって、年間スケジュールに合わせた調整ができなかった。
とくに世界リレーは中米のバハマ開催だったうえ、日本選手権がその2週間後というスケジュールで、両方に出場した選手たちの負担が大きかった」
昨年の世界リレーは今年の世界陸上の出場枠がかかった大会であり、今年の世界リレーは来年のリオデジャネイロ五輪の出場枠がかかっているため、外すわけにはいかない大会だ。
そこに出場した選手は「アジア大会代表選考で優位になる」と発表されたが、どこまで選考に影響するのか詳細が明確ではなく、すべての競技者やコーチが「その条件を把握・共有できていなかった」と伊東氏は言う。
世界リレーに出れば、疲労は残る。当然「選ばれてもメリットがないなら、来年は出場したくない」という思いを持つ選手も出てくる。
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