2019.08.14

ゴールボールの若きエース金子和也。
様々な思いを込め一球入魂を誓う

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

 1年後に迫った東京パラリンピックに初出場が決まっている、ゴールボール男子日本代表。世界最高峰の舞台での頂点を目指し、厳しい選考会を経て選ばれた強化指定選手たちを中心に、合宿や試合、海外遠征などを通じ懸命の強化が進められている。そんななか、ゴールゲッターとして期待されているのが19歳の金子和也だ。

ゴールボール男子日本代表での活躍に期待がかかる金子和也 1チーム3人で行なうゴールボールでは、守備は司令塔となるセンターを中心に3選手で協力して行ない、攻撃は主に両サイドに入るウイングと呼ばれる選手が担う。金子のポジションはレフトウィングで、俊敏性や脚力を活かした高い得点力が魅力だ。そして、金子の特徴であり、最大の武器は、「サウスポー」であること。現日本の強化指定選手では一人だけで、世界を見渡してもその数は少ない。

 選手は目隠ししてプレーするので「音」が頼りで、「耳慣れ」も重要だ。例えば、右利きと左利きではボールの投げ出す位置や回転方向などが異なる。金子によれば、以前、国際大会で左利き選手のボールを受けたとき、「音の聞こえ方が違うので守りにくい。イヤだなと思った」という。それはそのまま、自身が相手チームに与える印象でもあるはずだ。

 貴重な左腕から繰り出される自陣左から相手左への鋭角のクロスボールの切れ味は、チーム随一。ストレートボールやライトからの移動攻撃などを織り交ぜ、守備を揺さぶりながら、「最後は得意のクロスショットで点を取る」。金子が描く、理想のシーンだ。

 子どもの頃から体を動かすことが好きだった金子は、小学校1年生から地元のリトルリーグチームに入り、「体の一部」とも思えるほど野球に打ち込んでいた。だが、4年生のとき突然、視神経の難病を発症。視力は落ち、特に左目は視野の中心に雲がかかったような状態となり、白球を追うことが難しくなった。それでも、大好きな野球と関わりたいと、卒業までチームに残り、中学でも野球部に入ってマネージャーになった。

 だが次第に、「選手でない自分」に劣等感を覚え、家に閉じこもるようになる。何もやる気が出ない。「生きる屍のよう」で、母には「ひどい顔をしている」と言われる毎日だった。