「双子姉妹」葛西優奈・春香がノルディック複合女子で快挙 オリンピック正式種目採用の夢を胸にさらなる成長を誓う (2ページ目)
【双子姉妹の切磋琢磨でこれまでも、これからも】
葛西優奈・春香の双子姉妹は北海道札幌市出身、2004年生まれの21歳。小学生時代からジャンプを始め、中学時代に全日本スキー連盟の女子ノルディック複合強化の合宿に参加して本格的に複合を始めた。高1の時の2020年ユース五輪には優奈はジャンプ、春香は複合で出場したが、最初に頭角を表したのは優奈だった。
優奈は2021年世界ジュニア複合で個人4位に入り、世界選手権にも出場。2021年12月からW杯に本格参戦すると、2戦目のマススタート、3戦目には「ジャンプ→距離」の順で行なうグンダーセンでともに3位になり、上位に食い込み始めた。
一方の春香も2022年3月の世界ジュニアで2位になると、初出場したW杯最終戦の2試合はともに2位と一気に飛躍。そして2023年1月のワールドユニバーシティゲームズ(大学生世代の総合競技大会)ではグンダーセンで春香、マススタートで優奈が頂点に立つ形で2種目とも姉妹でワンツーフィニッシュを実現。その後、姉妹は世界の舞台でも競り合う関係になっていく。
今季のW杯は2月9日までの全12戦で、春香が2位3回、3位4回で総合2位と先行し、優奈は総合4位だったが、2月のマススタートでW杯初勝利を収めた優奈が、その勢いに乗り、世界選手権も制する結果になった。
ふたりの世界選手権最終戦となった3月2日のグンダーセン(ジャンプ・ノーマルヒル→距離5km)は雨中の状況に苦しみ、最終的には優奈が6位(ジャンプ9位)、春香が7位(ジャンプ7位)という結果に終わったが、今後への手応えをつかむ大会になったようだ。
「ジャンプでもう少しいい位置に付ければ展開も変わったと思いますが、クロカン(距離)も今季は何試合かいい走りができ、どこが自分の弱いところかが徐々に明確になり、今後、どんなトレーニングをしたらいいかがわかってきました。
来季、また2年後の世界選手権でどんなパフォーマンスができるか楽しみというか、いい刺激になったレースだったと思います」(春香)
「マススタートでは勝ちましたけど、個人的には(後に距離を行なう)グンダーセンでゴールを切った時のほうが『優勝した!』という感じがあると思うので......。そのためには、特にジャンプが重要になってきます。
ノルウェー勢は最後まで失速しない走りができる強さがあり、彼女たちのようにひとりでも走れ、自分で引っ張っていける力をつけないと金メダルは難しいと思っていますので」(優奈)
五輪の正式種目ではない現状のなか、ふたりはどのようにモチベーションを維持しているのだろうか。
「優奈と一緒にメダルを持って帰れるのは本当にうれしいですけど、混合団体は本当に悔しい気持ちがいっぱいです。それでも暁斗さんと涼太さんは『メダルは取れなかったけど楽しいレースができた』と言ってくれました。
徐々にレベルは上がっているので、2年後に向けて一つひとつ積み上げ、次の世界選手権は全種目でメダル取れるように頑張りたい」(春香)
「世界でずっと表彰台に上がり,まだマイナー競技である日本で『こんな競技があるんだよ』と知ってもらうことが五輪(種目になること)につながる第一歩だと思っています。
五輪種目になると言われていながら、ならなかった時の衝撃は、本当に大きくて『何を目指せばいいんだろう』とまで思ったこともありました。それでも、私たちが(競技を)続けていく意味を、少しでもわかってもらえたらうれしいです。
でもまだまだチャンスはあると思いますし、自分が出られる時にオリンピックの正式種目になってくれたらうれしいですけど、今後続けてくれる選手のためにもオリンピックがいつか実現するように頑張っていきたいです」(優奈)
ふたりにとって今回の世界選手権における優勝&ダブル表彰台は、夢に向かう出発点になったと言えることは間違いない。
著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。
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