体操・橋本大輝のオリンピック連覇への道筋 高校時代の恩師が語る金メダリストのすごさ (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha

【東京五輪後3年間の成長】

 東京五輪からの3年間で橋本が成長した点について、神田コーチの眼にはどう映っているのか。

「跳馬以外の5種目で技を増やしましたね。あん馬のウゴニアンや鉄棒のリューキンなどがそうです。それに、ゆかの着地がだいぶうまくなった感じです。NHK杯を欠場したので、今回のパリ五輪は演技をまとめていくしかないです。それで勝負するしかない。0.1点の差で勝つことに集中していくことになりますね。跳馬のロペスは跳んでおけば問題ないでしょう。着地もよくなっています。鉄棒は降り技が課題。でも、カッシーナとコールマンの連続をやってDスコア6.9点をマークできればいいですね。

 東京五輪での活躍はすごいことですが、ふだんの練習を見ると、もっとやれるし、まだまだできるだろうと思います。やっぱり五輪2連覇を達成してほしいです。2連覇できたら、もしかしたら指のケガのお陰と言えるかもしれませんね。ケガをしなかったら気負いすぎちゃったかもしれません。特に今シーズンは練習ができているから、何かいい薬になりそうな気がします。

 東京五輪と同じ演技は、橋本にとってはすごく楽な気持ちでできるはずです。つり輪、跳馬、平行棒の3種目の演技を東京五輪と同じ演技構成にして変えなければ楽に臨めるでしょう。そして鉄棒はDスコア6.7点でいけば、平行棒で無理しなくても勝負できるんです。ただ、鉄棒もつり輪も技の順番を変えたり戻したりして演技構成をいじってやっています。いかにして点を取るか、とにかくしぶといですよ」

 男子体操の最大の目標はあくまでも団体総合での金メダル。東京五輪経験者の橋本、谷川航、萱和磨の3人に加え、五輪初出場となる岡慎之助と杉野正尭という組み合わせになった。団体総合の決勝では前半のゆか、あん馬、つり輪の3種目でいかに得点を取りこぼさずに戦えるか、後半の跳馬、平行棒、そして鉄棒で得点アップを図ることができるかがカギを握る。そのキーマンは言うまでもなく、エースの橋本大輝だ。

 体操界のレジェンド、内村航平のように日本代表チームをどこまでまとめて、エースとして団体優勝に導けるか、注目される。
(つづく)

■Profile
神田眞司(かんだしんじ)
1959年2月1日生まれ、千葉県出身。中学1年で体操を始め、習志野市立習志野高校、順天堂大学、同大学大学院を経て、1989年4月から母校・習志野高校の教諭になり、教師生活と同時に体操指導者としての活動もスタート。2006年4月から船橋市立船橋高校の教諭として同校体操部を指導し始め、今年で指導歴36年目を迎える。定年退職後、5年間の再任用教諭も24年3月で終了。現在は市船の技能講師とセントラルスポーツのアドバイザーコーチとして教え子たちを指導する毎日を送っている。23年に3度目となる日本体操協会の優秀指導者賞を受賞している。

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