乳房切除、転移発覚......乳がんの女性(51歳)がビキニを着てステージに立つ理由「残りの人生はおもしろく生きたい」 (3ページ目)
【ステージは自分が一番輝ける場所】
2023年8月に開催された水戸大会には、長女のなのはさん(23歳)とそろって出場し、同年10月のジャンル別&職業別東日本大会のミス・看護師部門ではふたり並んでステージに立ち、ともに入賞を果たした。
長女のなのはさん(右)と親子でコンテストに出場している 写真/本人提供この記事に関連する写真を見る
たまきさんはボディコンテストのステージを「非日常を楽しめるし、自分が一番輝ける場所じゃないかなと思っています」と胸を張る。
今後の目標は、年齢でカテゴリが分かれる同大会において、プラチナクラス(60歳以上)の年齢になるまで出場し続けることだ。
「合間合間にやっている治療でつらいことはたくさんあります。がんは体もきついけど、一番きついのは心。今までできたことがどんどんできなくなって、心が折れる瞬間が何度もあった。
でも、だからこそ、今できていることに感謝するようになった。今はまだここまでできるんだから大丈夫だって、切り替えが上手になったかもしれませんね」
グランプリを獲得した昨年9月の那覇大会の2週間前、新治療として紹介されたラジオ波治療を試してみたところ、骨盤のがんがなくなり、現在は良好な状態だという。この治療と出会ってなかったら歩けなくなってもおかしくないほど、がんが進行していたなかで起きた奇跡だった。
前向きに、ユーモラスにトレーニングを続けたたまきさんに、神様が贈ってくれたサプライズだったのかもしれない。
「今は人生を楽しむのが最優先。今までやりたかったけどできなかったことをひととおりやりたいと思ってます」
たまきさんは介護タクシーを開業するために二種免許を取得し、ハイエースを購入して家族を驚かせた。今後は、がん専門運動指導士という資格を取得して、適切な運動方法を同じ境遇にいる人たちに提供するのが目標だという。
たまきさんは自身の人生を、前向きにこう考える。
「再発、転移は自分の人生を振り返るすごくいいきっかけになって、がんのおかげでいろんなことに挑戦できています。私からこの病気をとったら、今の自分はいないんじゃないかな」
「また一緒にコンテストに出たい」とふたりは話すこの記事に関連する写真を見る
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【プロフィール】
大畑たまき おおはた・たまき
1972年、千葉県生まれ。ヨガインストラクターやトレーナーを経て、42歳の時に看護師に転職。2022年に乳がんの転移が発覚後、本格的にボディメイクを始め、がん患者でもできる自重トレーニングをインスタグラムで発信。同年夏から「ベストボディ・ジャパン」に出場し始め、2023年には長女のなのはさんと一緒にステージに立つ。2024年3月には著書『乳がんステージ4の私が伝えたいこと: がんステージ4から人生最高のステージに?! がんだからおもしろく生きてます』(Amazon Kindle)を上梓。
著者プロフィール
武松佑季 (たけまつ・ゆうき)
雑誌ライター。1985年、神奈川県秦野市生まれ。編集プロダクションを経てフリーランスに。インタビュー記事を中心に各メディアに寄稿。東京ヤクルトファン。サウナー見習い。
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