ボートレーサー内山七海、27歳 高3のときに初めて知った「祖父がボートレーサーだった」で運命が動き出した

  • キンマサタカ●取材・文 text by Kin Masataka

女子ボートレーサー

内山七海 インタビュー前編

ボートレーサーになるきっかけを語った内山七海 photo by 栗山秀作ボートレーサーになるきっかけを語った内山七海 photo by 栗山秀作この記事に関連する写真を見る

【7回目の試験で養成所に合格】

 2023年10月半ば。ボートレース平和島で開催されたレースは2日目を迎えていた。

 10Rで6コースから0.7のタイミングでスタートした内山七海は、内側を走るスロー勢(1~3コース)より少し遅れてターンマークへ向かう。ボートレース最大の見せ場である第一ターンマークでは、実力で勝る1号艇、3号艇がしっかりとターンを決めて、先頭を固める。最高峰のA1級選手らしい安定感。この時点で内山は5位。

 だが内山は、第二ターンマーク付近で一気にまくって3着につける。ボートレースは順位によってポイントが与えられ、その積み重ねでクラスが昇降する。B1級の内山は2位を狙える位置につけていたが、3周目の第一ターンマークで先頭艇の波に乗り上げてまさかの転覆。スタンドからはため息が漏れた。

「まくりにいったら波に乗っかりバランスを失いました。完全に実力不足です」

 勝率6.53、平和島有数のパワーを持つ16号機モーターを抽選で引き当てた内山は、開幕からノっていた。

 初日は5コースからまくり差しで1着、2日目も4コースから差しで1着と、最高のスタートを切ったことから、モーターとの相性がよかったことがわかる。初斡旋の平和島でダークホースになるかと思われた。

 だが、2日目の2走目でまさかの転覆。その後は精細を欠いた。

「モーターに水が入ってしまったのか、思ったような機力が出せなくなったような気がします。申し訳ないです」

 そう言ってインタビュー場を後にした彼女の背中は、やけに小さく見えた。

 女優のような端正な顔に、すらっと伸びた手足。164cmの長身は、男子選手と並んでも引けを取らない。

 現在27歳の内山の初レースは、2020年11月のボートレース若松だった。新人らしく最下位に終わったデビュー戦から、2年が経とうとしている。268走目で初勝利という数字は、同期の中でも下から数えたほうが早い。だが、2023年からじわじわと成績を上げて、ボートファンからも一目置かれるようになった。

 内山が最初に注目を集めたのは、ボートレーサーになる前だった。養成所の試験に弾かれ続けて、なんと7回目の試験でようやく合格。強き意志で門戸を叩き続けたことが、ボートレースファンの間でも話題になったからだ。

「1次試験は体力テストと筆記なんですが、ぜんぜん通らなくて......。学費(2017年以降は無償化)を貯めるためにアルバイトをしながら受験を繰り返しました」

 彼女が初めて試験を受けたのは19歳の頃だった。当時、大学生だった内山は、ボートレーサーの養成所に受かったら大学は辞めるつもりだったという。

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