人気の女子ボートレーサー北村寧々が語る「運命の出会い」 なぜ命の危険もあるボートの世界に入ったのか (3ページ目)

  • キンマサタカ●取材・文 text by Kin Masataka
  • 栗山秀作●撮影 photo by Kuriyama Shusaku

 だが、レースのあとは容赦なくミスを指摘される。

「ターンの時に右腹が浮いてしまう癖があって、タイミングひとつぶん旋回が遅れちゃうんです。『それがきちんとできたら1点上がってるぞ』って」(レースでは順位に応じて得点が与えられる。一般競走は1着10点、2着8点、3着6点、4着4点、5着2点、6着1点)

 練習で一緒に走ったり、あるいはレースを見るうちに師匠のすごさにも気づいた。何より北村を驚かせたのは、宮本のハートの強さだ。たとえ不利な5、6コースでも貪欲に1着を狙いにいくし、逆境になっても諦めない。フライングを連発していた時に、自分を追い込むために高級腕時計を買ったというのも宮本らしいエピソードだ。A1級昇格を狙う宮本も、北村と一緒に成長を続けていると言えるかもしれない。

【勝負を分ける技術の向上は「まだまだ」】

 北村が身を置くのは真剣勝負の世界。負けが続けば引退勧告をされる厳しい現実がある。現在、北村が所属するのはB1級。B2級は新人や反則を重ねて休みが続いたレーサー等が所属するので、B1級は実質プロとしての"最低ライン"と言っていい。ボートレーサーの実に半数がB1級に所属し、最高位のA1級は上位20%。昇級するにはひたすら勝利を重ねるしかない。

 ボートレースで大事なのは「スタート」「旋回」「調整」の3つだ。独特のスタート方式を採用するボートレースにおいて、スタートの優劣はそのまま勝敗に直結する。旋回は選手の腕の見せ所とも言える。そのどちらも「まだまだ」と北村は感じている。

「スタートはまだまだ下手くそですね。旋回も、2コースや4コースだと、引き波にハマっちゃうことがあるんです。それさえなければ着順も上を狙えるし、『もったいないな』と思ってます」

 引き波とは、ボートが走った後に残る波のこと。ここにハマるとボートが操縦しにくくなり、減速する。引き波にハマってしまう理由は、「踏み込みすぎ、あるいは速度を落としすぎ」。「ここぞ」という感覚がまだ掴みきれてないからだ。

 そして調整力。モーターはレース開催ごとに抽選でレーサーに振り分けられる。モーターはすべて同じ性能のはずだが、やはり個体差があって、レーサーの調整でその働きは大きく変わる。北村もモーターをいじるのが昔から好きだったからこそ、その難しさを体で感じているところだ。

 ただ、いいエンジンでも悪いエンジンでも、A1レーサーは必ず結果を残す。北村がすべて6着に終わったモーターがあったが、次の節でA1レーサーが乗って優勝したこともあった。

「3つすべてを高いレベルに持っていって、上の人たちと互角に戦えるようにならないと」

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