大相撲、春場所の優勝争いを錣山親方がチェック 「新星」北青鵬と落合にはあえて辛口のメッセージ (2ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 大栄翔は、今や角界の一大勢力となっている埼玉栄高相撲部の出身力士。高校卒業後に、追手風部屋に入門し、地道な稽古を続けて3年足らずで新十両に昇進しました。その後、幕内と十両の往復はあったものの、2017年の春場所からは幕内力士として安定した成績を残せるようになりました。

 圧巻だったのは、2021年初場所。見事に平幕(前頭筆頭)で賜杯を手にしました。

 この場所では、初日から三役力士を総なめにするなど8連勝を飾って勝ち越し。大関・正代と優勝を争った末、悲願の初優勝を決めました。その快進撃については、よく覚えている方も多いのではないでしょうか。

 ただそれ以降は、8勝、6勝、5勝......と思うように勝ち星を挙げることができずに低迷。時折、ふた桁勝利を挙げることはあっても、翌場所で好成績を残せず、いつしか「次期・大関候補」といった呼び名もトーンダウンしてしまいました。攻め方も、右ノド輪だけになっている点も気になっていました。

 ところが、今年に入ってからの大栄翔は違ってきています。初日の錦木戦から回転のいい突っ張りが出て、腕も足もよく前に出ています。5日目の正代戦などを見ても、優勝した当時の相撲に近づいてきています。

 試行錯誤はあったでしょうが、29歳の今、すばらしい力を発揮。優勝争いに絡んでくることはもちろん、今後のさらなる躍進を見込んでいます。

 先場所でもこのコラムで紹介した、阿武咲(前頭4枚目)も楽しみな存在です。引き続き好調を維持しており、上位争いが期待されます。

 若い頃から頭角を現わしていた阿武咲は、一時相撲に悩んで時期もあったようですが、今やそれも吹っ切れたのでしょう。土俵上で、すばらしい出足を見せています。

 体の張りに関しては、先場所以上じゃないでしょうか。また、張りだけでなく、体を大きく見せています。その辺りは、本人の「稽古十分」という自信から培われているのだと思います。

 2日目には翠富士に敗れましたが、勝っている相撲の内容がいいので、気にしなくていいでしょう。26歳とまだまだ若いですし、大栄翔とともに優勝争いを引っ張っていってほしいです。

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