「すごい試合をした」いきなり大量失点→まさかの大逆転 カーリングミックスダブルスの松村千秋&谷田康真はなぜ優勝できたのか (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・文 text&photo by Takeda Soichiro

 そして、5エンドには相手に1点を与えて後攻を得て、迎えた6エンドにパワープレーを選択した。その勝負の6エンドもどちらかと言えば、小穴と青木の巧みなハウスマネジメントの前に受け身を強いられる形となったが、松村が乾坤一擲の最終投で、鮮やかなダブルテイクアウトを決めた。

「谷田選手の言った(指示の)位置にしっかり投げるだけでした。今季、トップ(ウエイト)のショットは決まっている印象だったので、いいイメージで自信を持って投げることができた」

 会心の一投を松村はそう振り返ったが、これで大量4点を呼び込んで逆転に成功。ハウス内が混み合うことの多いミックスダブルスの醍醐味が凝縮されたショットだった。

 その後、続く7エンドに1点を返され、最終8エンドでも食い下がる小穴・青木にスチールを許して延長戦に突入するが、「エキストラ(延長)になって勝ち抜けるメンタルはあったので、焦ってはいなかった」と松村。戦いが終わるまで冷静さを失わずに最善を尽くし、最後にきっちり1点を奪って8-7のシーソーゲームを制した。

 試合後、「劣勢であっても、優勢であっても、大きくメンタルが上下しないっていうのは、ミックスダブルでは大事だと海外遠征で感じていた」と総括したのは、谷田だ。

「4点のリードで、少し緩みがあったかもしれない」(青木)
「(松村・谷田は)試合の経験があって、勝ち方を知っていた」(小穴)

 それら対戦相手のコメントと併せて、4点ビハインドでも、2点リードでも攻めの気持ちを忘れずに、よりよいポジションを確保する姿勢がブレなかったことが、松村・谷田の最大の勝因と言えるのではないだろうか。

 苦しみながらも、終わってみれば全勝優勝で2度目の栄冠を手にした松村・谷田は、4月に韓国・江陵市で開催される世界選手権に出場する。チームとしては昨年に続き、2度目の世界挑戦だ。

 ミックスダブルスでは、日本はいまだ五輪の舞台は未経験だ。2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ大会で初出場を果たすためには、世界選手権で安定した成績を求められる。

 日本の過去最高成績は、藤澤・山口(藤澤五月&山口剛史)が2018年と2019年に記録した5位。昨年の大会では9位に終わった松村・谷田だが、「まずはその(過去最高成績の)上を目指します」と谷田は力強く語った。

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