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東京五輪での出番が消えた「幻のチアチーム」。出演が全カットされるまでの準備と解散までの記録 (2ページ目)

  • 森大樹●取材・文 text by Mori Daiki

インタビューに応じてくれたMEMEさんインタビューに応じてくれたMEMEさんこの記事に関連する写真を見る 1年という時間はアスリートと同様、彼女たちにとっても長すぎた。

「五輪についてのニュースを見ていると気持ちが揺れ動いちゃうので、目に入れないようにしていました。私たちにできるのは、世間でいろいろ言われたとしても、いいものを作ること。なので、そのシンプルな気持ちを忘れないようにして集中していました。

 でも、1年の間にはいろいろあるものです。結婚や出産、海外移住した人もいました。それでも『出たい』と言ってくれる子がいる以上、みんなの希望を盛り込みたかったから、なるべく参加できるように調整しましたし、『最悪、五輪のパフォーマンス当日にその場にいてくれればどうにかなる』という心づもりで準備してきました。

 普段からディレクターとして、楽しく、みんなが何でも言える空気感を作ることを大事にしていて、その瞬間に出る力を最大限引き出したいといつも思っています。特に女の子は、楽しくないと続かない傾向が強いので、オリンピックでもその点は意識していましたね」

 対面での活動は最小限で行なわなければいけなかったため、動画を撮影し、細かい練習は各自に委ねた。MEMEさんは「経験があるメンバーだからこそ信じて任せることができた」と言うが、振りを合わせるには限界があるのも事実だ。

 微妙な角度や立ち位置、距離感などは会わないとわからない部分もある。全員が揃ってリハーサルできるチャンスは、会場で行なうたった一度しかないという状況だったが、MEMEさんは割り切って、きっちり振りを揃えようとはしなかった。

「振りは会わないと揃いません。その分、パフォーマンスにパワーと勢いがほしいと思っていました。舞台は生モノで、一生に一度の瞬間です。曲が流れる一瞬にそれぞれが持つエネルギーを爆発させることが大切で、あとはこちらが身長や手の長さ、ポジションを考慮することで、ある程度振りは揃って見えたりするんです。

 メンバーには、一緒に練習ができないのはしょうがないとして、ほんの数分のパフォーマンスを同じ熱量、テンションできるように各自準備してほしい、と話しました」

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