2020.12.10

岩田健太郎は東京五輪に不安。「できない基準が設定されていない」

  • 木村元彦●取材・文・写真 text & photo by Kimura Yukihiko

 2020年のスポーツ界は新型コロナウイルスに翻弄された。最も大きなトピックは東京五輪の延期であろう。3月末に緊急事態宣言に前後して中止が宣言され、来年7月の開催ということが発表された。プロスポーツは感染の状況を見据えながら、シーズン日程や試合そのもののレギュレーションを変えて流動的に運営を再開し、NPBはソフトバンクが日本一、Jリーグディヴィジョン1は川崎フロンターレの優勝が決まった。

 リーグを成立させたこのタイミングで神戸大の岩田健太郎教授に、今年のスポーツ界におけるコロナ対策について総括的な話を聞いた。
感染症の世界的権威でもある神戸大学の岩田健太郎教授

 岩田が感染症の世界的権威であることは論を俟(ま)たない。そのキャリアを辿れば、2001年ベスイスラエルメディカルセンターの感染症フェローとしてニューヨークで炭疽菌対策に従事、2003年には中国・北京でSARS(重症急性呼吸器症候群)の治療に当たり、2009年新型インフルエンザの対策に意見を求めた舛添要一厚労大臣(当時)からは厚労省改革のための「改革推進室」のメンバーに抜擢される。また、2014年12月には死亡率が9割というエボラ出血熱に苦しむアフリカ・シオラレオネにWHOの対策ミッションの専門家として派遣されている。

 そして今年2月、新型コロナウイルスが集団感染しているダイヤモンド・プリンセス号に乗船。ゾーニングに関してさえ全く無知な橋本岳厚生労働副大臣(当時)が指揮をする現場に入り、「素人の官僚が指揮を執っていて、感染症対策はアフリカより悪く、このままでは感染が拡大する」と忖度なくユーチューブで告発。炎上に一切怯むことなく、感染症対策に関してはプロフェッショナルとしての言動を続けている。

「コロナ対策においてまずプロスポーツを語るうえでは、チームサイドと観客サイドと2つに分けて考えるべきです。チームのマネージメントという意味では、日本はおおむね上手くいっていると思います。まずプロ野球から見て行くと、阪神、ロッテの選手などで感染者は見つかったんですけれども、これはスポーツのなかというより、私生活での感染。それ以上は被害が広がらずに済んでいる。感染ゼロというわけにはなかなか行かないので、これは許容範囲内だったかなと思っています。

 一方で観客のほうは、最初は無観客だったのを徐々に収容人数を広げていった。ただその広げていく根拠が若干不明確でした。気分の問題というか、「もう広げてええんちゃうの」みたいな感じで。海外ではまだ無観客試合がかなり主流な中で、日本の場合は感染が未だに増えている段階で観客数を増やすというのは、ビジネスサイドのご都合主義という印象が強いです。そこはやはり拡大する上での根拠は明確にしておくべきであったと思います」