2020.09.13

日本国籍を取得し結婚もした魁聖。
同期が次々に引退するなかで抱く夢

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

向正面から世界が見える~
大相撲・外国人力士物語
第8回:魁聖(3)

魁聖が角界入りを決めたわけ>>

9月13日、東京・両国国技館で初日を迎える大相撲秋場所(9月場所)。先場所に続き、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、観客数等を制限して開催されるが、力士たちの奮闘に注目が集まる。

静かに闘志を燃やす魁聖もそのひとりだ。サンバやサッカーにはあまり興味がないというが、現在、ブラジル出身の唯一の関取である。そんな魁聖の、これまでの相撲人生に迫る──。

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 2012年には夏場所(5月場所)を前にして、所属する友綱部屋に新しいメンバーが加わりました。この年の春場所(3月場所)後に、大島親方(元大関・旭國)が定年退職となり、大島部屋所属の旭天鵬関や十両・旭日松らが、友綱部屋に移籍してきたのです。

 2011年名古屋場所(7月場所)で魁皇関が引退されて、寂しかった友綱部屋の土俵に活気が戻ってきた感じでしたね。もともと出稽古などで胸を合わせていた力士たちばかりでしたから、すぐに打ち解けることもできました。

 移籍してきた旧大島部屋の力士たちも、移籍して悪い成績は残せない。「一丸となってがんばろう!」と気合いを入れていたと聞きました。

 その直後、まさかあんな奇跡が起こるなんて――。

 夏場所が始まり、序盤は2勝3敗という成績だった部屋頭で、37歳の旭天鵬関が、後半に勝ち星を重ねて、優勝戦線を引っ張る展開になったのです。そうして、千秋楽の一番も制し、12勝3敗とした旭天鵬関は、優勝決定戦で栃煌山と対戦。土俵際ギリギリで粘って、ベテランの技で栃煌山を下し、平幕優勝を果たしたのです。

 こういう展開ですから、僕は自分の取組が終わってからも支度部屋に残り、状況を見守っていました。優勝決定戦を花道で見守っていた旭日松や付け人たちは、優勝が決まった瞬間、人目もはばからず泣いていました。もちろん、旭天鵬関も涙を流していました。僕も心の中で泣きました。