2020.05.11

奥原希望が劣勢から手に入れた新スタイル。
攻守融合の変化で勝利を飾った

  • 平野貴也●文 Hirano Takaya
  • photo by AFLO

東京五輪&パラリンピック
注目アスリート「覚醒の時」
第2回 バドミントン・奥原希望
BWFワールドツアーファイナルズ(2018年)

 アスリートの「覚醒の時」——。

 それはアスリート本人でも明確には認識できないものかもしれない。

 ただ、その選手に注目し、取材してきた者だからこそ「この時、持っている才能が大きく花開いた」と言える試合や場面に遭遇することがある。

 東京五輪での活躍が期待されるアスリートたちにとって、そのタイミングは果たしていつだったのか……。筆者が思う「その時」を紹介していく——。

2018年のツアーファイナルズを戦う奥原希望。現在の攻守融合のプレースタイルが生まれた大会だった 異なる強さを身につけて、2度目の五輪に挑む。2016年リオデジャネイロ五輪で獲得した銅メダルから、2021年東京五輪の金メダルへとステップアップを狙うバドミントン女子シングルスの奥原希望(太陽ホールディングス)は、自身の確実な成長を感じ取っている。

 今年3月の全英オープンはベスト4だったが、1年前との違いについて奥原は、こう話した。

「(昨年と同じ相手に敗戦したが)昨年に比べると、悪くないと思います。(攻撃を)仕掛けるタイミングは正しくても、相手を見ることができずにカウンターを受ける場面があったのですが、昨年は試合中にはそれに気づけませんでした。今は、試合中にわかって、1ゲームから2ゲームにかけて修正ができるようになっているので、そこはよくなっているところだと思います」

 持ち味である守備力に、攻撃力を付け加え、その使い方をマスターしつつある。その成長過程の背景には、これまでのキャリアがある。そこには、世界の頂点に立った輝かしい瞬間もあれば、悲鳴をあげる身体とうまくつき合えず、試合の棄権がつづいて悔し涙を流した日々もあった。