2020.03.15

大ケガを負って「相撲をやめよう」
と思った栃ノ心が再起できたわけ

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

向正面から世界が見える~
大相撲・外国人力士物語
第7回:栃ノ心(2)

 黒海、臥牙丸に続くグルジア(現ジョージア)出身力士として、2006年春場所(3月場所)で初土俵を踏んだ栃ノ心。母国で柔道に励み、オリンピック出場を目指していた彼は一転、異国の地で相撲に人生を賭けることとなった。

 身長190cm、体重140kg強の恵まれた体躯と腕力を武器にして、順調に出世。2008年夏場所(5月場所)には新入幕を果たした。だが、2013年名古屋場所(7月場所)に大ケガを負って、以降は連続休場を余儀なくされた。

 その結果、一時は幕下下位まで番付を下げたが、腐らずリハビリに励んだ栃ノ心。2014年九州場所(11月場所)で再入幕を果たすと、2018年初場所(1月場所)で初優勝を遂げた。そして、同夏場所後には、30歳にして大関昇進。遅咲きの花を咲かせた。

 その後、大関から陥落し、現在は平幕で相撲を取る栃ノ心。自らの、山あり谷ありの相撲人生を激白する――。

        ◆        ◆        ◆

 春日野部屋に入門し、初土俵を踏んだのが、2006年春場所のこと。初めて日本に来て、初めて相撲を取ってから、2年の月日が流れていました。

 3カ月間研修を受けたとはいえ、現実の相撲部屋での生活はきつかったですね。そもそも、日本にはジョージア人が数十人しかいないんですよ。入門して間もない頃は、お金もないし、携帯電話も持っていないから、故郷の家族に電話することもできなくて……。

 私より数カ月前に日本にやって来て、木瀬部屋に入門したのが、臥牙丸関です。部屋同士がわりと近かったので、臥牙丸関とはよく一緒にコンビニへ行っていましたね。でも、ふたりともお金がないから、アイスか、ジュースか、どちらを買うかって、迷ったものですよ。