錣山親方が惜しむ豪栄道の引退。春場所の注目は力強い相撲が戻った正代

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

元寺尾・錣山親方の『鉄人』解説
~2020年春場所編

元関脇・寺尾こと錣山(しころやま)親方が、本場所の見どころや話題の力士について分析する隔月連載。新型コロナウイルスの影響により、無観客で開催されることになった春場所(3月場所)についての率直な思いを語ってもらうとともに、異例な状況のなかで行なわれる場所での展望を分析してもらった――。

 3月8日から、大相撲春場所が始まりました。

 その直前、世界的規模で蔓延している新型コロナウイルスの影響を重く受け止め、日本相撲協会は春場所の15日間を、無観客で開催することを決定しました。大阪で開催される一年に一度の春場所。観戦に行く予定だった方々、全国の大相撲ファンの方々には、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 その苦渋の決断のなか、力士たちは土俵上で奮闘。慣れない環境に苦慮している部分もあると思うのですが、これまで稽古してきたことを糧にして、誰もががんばっています。ファンのみなさんには、その姿を、テレビを通して見ていただければと思います。そして、このような世界的な困難に直面し、気分が沈みがちになることも多いかと存じますが、力士たちの激闘を見ていただいて、みなさんがコロナウイルスのことを忘れる時間が少しでもあったらいいな、と思っています。

 しかしながら、相撲協会の決定事項としては、力士を含む協会員の中から1人でも感染者が出た場合、場所の途中であっても、開催は中止にする、という状況下にあります。その分、我々親方衆をはじめ、力士たちは毎日、細心の注意を払って生活しています。

 無論、20数名の力士を抱える錣山部屋の師匠である私には、大きな責任があります。それだけ多くの親御さんから、子どもである力士たちを預かっているわけですからね。

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