「稽古が足りないのに小結」錣山親方が新三役の愛弟子・阿炎を評す (2ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 けれども、いかんせん稽古が足りない。彼にはいつも、「体の芯から汗をかけ!」と檄を飛ばしているのですが、なかなか通じないようで......(苦笑)。

 本当は、人に言われて汗をかいても意味がないんです。自分から汗をかかなければ、ダメなんですよね。

 技術的な面もまだまだです。阿炎は、私と同じ突っ張りが武器の力士ですが、右手しか使えていないので、逆転負けが多いのです。突っ張りというのは、左右交互に手が回っていかなければいけないのですが、それができていないんですよ。だから、今は左手の強化を意識してトレーニングをさせているところです。

 ともあれ、日頃の稽古が足りないのに小結に昇進できるのですから、ある意味で「すごい」とも言えます。私は左右両方をきちんと使えるようになって、やっと三役に上がることができたわけですから、阿炎が両方の手をしっかり使えるようになれば、大関に上がれると思っています。

 今場所の初日は横綱・白鵬に敗れ、2日目は大関・豪栄道に敗れてしまいました。本人は「優勝を狙う」と公言していますが、このあと全部負けても、お客様が喜んでくれるような元気な相撲を取ってほしいです。

 優勝争いに目を向けると、毎場所のことながら、やはり横綱・鶴竜と大関・豪栄道が気になります。ただ、ふたりにはずっと裏切られてばかりなので......(苦笑)。今場所は優勝候補として当初、関脇・玉鷲を挙げていました。

 ご存知のように、今年の初場所で、34歳にして初優勝を遂げた実力派力士です。先場所8日目にも、鶴竜に圧勝するなど、随所でその実力を見せつけています。

 場所前に行なわれた二所ノ関一門の連合稽古では、一門の稽古を「引っ張っていこう」とがんばっている姿が印象的でした。率先して後輩力士に稽古をつけて、自らもガンガン稽古に励んでいました。気力があれば、年齢は関係ない――ということを、後輩たちには学んでほしいと思いましたね。

 今場所は初日から4連敗と優勝は厳しい状況ですが、今後の巻き返しに期待したいです。

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