「稽古が足りないのに小結」
錣山親方が新三役の愛弟子・阿炎を評す
元寺尾・錣山親方の『鉄人』解説
~2019年名古屋場所編
元関脇・寺尾こと錣山(しころやま)親方が、本場所の見どころや話題の力士について分析する隔月連載。今回は、7月7日から始まった名古屋場所(7月場所)での注目力士について語ってもらった――。
大相撲名古屋場所(7月場所)が7月7日から始まりました。
令和最初の本場所だった夏場所(5月場所)では、平幕の朝乃山が初優勝。年齢25歳、入幕から11場所目にしてこの新鋭力士が優勝するとは、私を含めて誰もが予想していなかったのではないでしょうか?
新大関として期待された貴景勝は、ヒザの負傷で途中休場。それから4日後に再出場してきた時には、正直、驚きました。ただ、再出場のリスクは大きかったようで、その後、再び休場。今回の名古屋場所も全休となってしまいました。
それでも、彼は22歳とまだ若いですから、今後に備えてしっかり治してほしいですね。そして復帰後、貴景勝らしい相撲を見せてくれることを期待しましょう。
さて、名古屋場所では、ふたりの新三役が誕生しました。
28歳の苦労人・竜雷(りゅうでん)と、私の部屋に所属する阿炎(あび)です。
そもそも、私は自分の弟子のことを語るのは苦手なのですが、新小結となった今場所はいい機会だと思って、阿炎について少しお話しましょう。
新三役となった阿炎 高校を卒業して、錣山部屋に入門した阿炎(前名:堀切)。2013年夏場所(5月場所)に初土俵を踏みました。小学生の頃から相撲に取り組んできたこともあって、2年足らずで十両に昇進しました。ただ、その当時は慢心もあったのでしょう。4場所十両を務めたあと、1年半ほど幕下で低迷していました。
しかし、2017年名古屋場所で十両に復帰してからは目が覚めたように、真摯に相撲に向き合うようにあって、2018年初場所(1月場所)で、ついに新入幕。その年の夏場所では、横綱・白鵬から金星を挙げるまでに成長しました。
身長187cm、体重150kgの恵まれた体格で、長い手足も持ち合わせています。我が弟子ながら、抜群の才能と資質に恵まれた力士だと思っています。
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